第18回 カーリングという特殊な競技。
永田 カーリングというスポーツは
特殊ですよね、ほんとうに。
刈屋 特殊ですね。
永田 実況の声より選手の声のほうが
大きくなる瞬間があるし、
選手が囁いているところでは
なんとかそれを聞きとりたいと思うし、
ルールはルールで説明してほしいし。
実際に実況するには、
そうとう難しかったんじゃないでしょうか。
刈屋 難しいですけど、おもしろいですね。
2時間半ってけっこう長いのかなと思っていたら
放送したら、あっという間ですしね。
永田 そうですね。観ていると、短い。
エンドで区切られていることもあるし、
なんというか、テレビ向けなんですよね。
とくに日本人が好む、テレビ向けのスポーツ。
エンドがあって、予想と期待ができて、
選手が期待どおりにやってくれたときの
「すごい!」っていうよろこびがある。
野球に近いかたちのスポーツというか。
刈屋 そうですね、野球に近いですよね。
永田 観戦しながらルールがだんだん
わかっていくというたのしさもあったし。
小林さんの解説もすごくわかりやすくて。
刈屋 はい。よかったですよね、小林さんの解説は。
ぼくもずいぶん勉強になりました。
永田 あの、フィギュアの中継のときなんかは、
たとえば刈屋さんが
「これは2回転ですよね?」
と佐藤さんに質問するときは
刈屋さんは、ほんとうは
わかっているんだろうなという
感じがあるんですけど‥‥。
刈屋 カーリングは「どっちですか?」って
本気で聞いてました(笑)。
永田 そんな感じでしたよね(笑)。
観るほうとしては、そのあたりに
妙な感情移入ができるんですよね。
「これは‥‥ミスですよね?」
と刈屋さんがちょっと不安げに確認するのが。
刈屋 そうそう(笑)。
「これは、狙ってるんです‥‥か?」みたいなね。
で、「いやいや、ミスですよ」と言われて
「ああ、そうですよね!」みたいなね(笑)。
永田 小林さんの答えも
「Aプランとしては失敗だけれども
 Bプランとしてなら成功」
というようなことがあったりだとか。
刈屋 そうそう、そうなんですよ。
だからぼくもほんとうに
あれをやりながら勉強しましたね。
永田 それはもう、視聴者としては
すごくありがたかったところだと思いますし、
日本でカーリングがブレイクした
要因になったと思いますけど。
刈屋 ぼくも帰ってきたら、そう言われました。
あれですごく勉強になったって(笑)。
そうすると、つぎからその知識が活きるから
どんどん観ていておもしろくなるって。
永田 スポーツって、どれもそうだと思うんですけど、
ルールや見方をちょっとずつ
学んでいくかというとそんなことはなくて、
どっかの一回の経験で、
かたまりとしてガッと情報を受け取って、
そのスポーツに入っていくんだと思うんですね。
刈屋 はいはい。
永田 だから、その一回の情報が
なんなのかということがすごく重要で、
そこが刈屋さんの人気の理由というか、
刈屋さんの実況だとひじょうにありがたい部分で。
一回で情報のかたまりを
すっと受け取ることができて
つぎは違う視点から観ることができる。
それが刈屋さんの実況だなと思うんです。
刈屋 そう言っていただけると
とてもうれしいですね。
永田 実際、カーリングそのものの人気も高まって、
都内のスケートリンクのカーリングコースが
予約でいっぱいになったと聞きました。
刈屋 観ているとやりたくなりますよね。
じつはぼくもこの間、
小林さんが個人的にやっている
山中湖まで家族で行って、
カーリングをやってきたんですよ。
永田 あ、そうなんですか(笑)!
刈屋 でもね、ぜんぜん
思ったとおりに行かないんですよ(笑)。
投げると同時にゴローンって
ひっくり返っちゃったりして(笑)。
使わない筋肉を使ったもんだから
3日くらいあちこち痛くてたいへんでしたよ。
永田 (笑)

2006-06-28-WED

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN