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永田 |
トリノでの刈屋さんの実況というと、
フィギュアスケートとのほかに
忘れてはいけないのがカーリングです。 |
刈屋 |
カーリングがこんなに日本で
ウケてるとは思いませんでした(笑)。 |
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永田 |
実況中、くり返しおっしゃられる
「マリリン!」「マリリンショット!」
という刈屋さんの言葉に
メールがたくさん来てましたが‥‥。 |
刈屋 |
あんなに反響があるとは(笑)。
あの、そもそものところを説明すると、
まず、トリノのカーリングの実況は、
日本テレビの河村(亮)アナウンサーと
フジテレビの森(昭一郎)くんと
テレビ朝日の大熊(英司)アナウンサーと
ぼくの4人が担当することに決まってたんです。
それで、実況を担当するぼくらで
トリノがはじまるまえに、
北海道の常呂町まで取材に行ったんですよ。
大熊くんは来られなかったから、3人で、
吹雪の中を出かけて行ったんですね。
そのとき、取材時間が限られてましたから、
3人で分担して選手を取材したんですよ。
そこでぼくが担当したのが、林弓枝さんと、
マリリンこと、本橋麻里さんだったんです。 |
永田 |
ああ、なるほど。 |
刈屋 |
で、取材してみると、
林さんと本橋さんだけでなく、
5人の選手の印象がすばらしかったんですよ。
こういう言い方は変かもしれませんけど、
ほんとうに「いい子たち」だったんですね。
なんていうのかな、5人ともすごく素朴で、
カーリングに対して、ひたむきで誠実で。
日本の若い女性がこういう人たちだったら
将来安泰だなと思うくらい(笑)。
それで、もう、ぼくら3人ともすごく感動して、
その、選手たちに感じた親しみを、
どうやって表現しようかというのを
帰りの吹雪のタクシーの中で話したんです。
カーリングというのは特殊なスポーツで、
ほかの競技と違って、選手ひとりひとりが
テレビに露出する量が多いんですよ。
試合前にはかならずひとりずつ紹介されますし、
なによりマイクが仕込まれていますから、
本人たちの声がそのままオンエアに乗る。 |
永田 |
そうですね。 |
刈屋 |
だから、選手ひとりひとりに
親しみを持ってもらったほうが
観るときに絶対おもしろいんです。
それで、なんとか親しみを持ってもらう
方法がないだろうかと話していたときに、
ぼくが、本橋という選手のことを、
みんなは「マリリン」て呼ぶらしいよ、
って言ったら、ほかのふたりが
「マリリンですか!」って(笑)。 |
永田 |
反応よく(笑)。 |
刈屋 |
しかも「チーム・マリリン」を率いて
ジュニアの世界選手権も出たことがあると。
じゃあ「マリリン」で行こうか、
ということになったんですよ。
で、トリノに行って、ほんとうに
そう呼ぶかどうか迷ってたんですけど、
競技がはじまる前に
カーリングの公式記者会見があったんです。
そこに我々4人で行って、いちばん前に座って、
質疑応答の最後にぼくが手を挙げて
「日本向けの放送で本橋さんを
『マリリン』という愛称で
紹介しようと思うんですけど」って。 |
永田 |
刈屋さんがおっしゃったんですか? |
刈屋 |
はい、言いました。
世界中のプレスがいる公式の記者会見で(笑)。
そしたら、選手たちが快諾してくださったんです。
もう、青森でも常呂町でも「マリリン」だからと。 |
永田 |
ご本人も? |
刈屋 |
本人も「ぜひ」と。
じゃあもう、それで行きましょうということで、
まず、最初の試合を担当した
日本テレビの河村アナウンサーが、
試合の実況のなかで
「この選手は『マリリン』と呼ばれています」
ということを言ったわけです。
最初ですから、まずは控え目に(笑)。
つぎの試合の担当がぼくでしたから、
ぼくはその中継の様子を観て、
「よし、オッケー!」と思って、
遠慮なく「マリリンです!」と(笑)。 |
永田 |
ああ、そうだったんですか。
なんとなく、刈屋さんが突然
「マリリン」と言い出したような
印象があるんですけど(笑)。 |
刈屋 |
違う、違う(笑)。
ちゃんと河村アナウンサーが
伏線を張ってくれてたんです。
だから、安心して、さも当然というように
「ご存じマリリン」って(笑)。 |
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永田 |
「マリリン・ショット」(笑)。 |
刈屋 |
「マリリン・ショット」(笑)。
あんなに話題になってしまうとは
ほんとうに思いませんでしたが。 |
永田 |
話題になってましたよ。
でも、あれも、すごく誤解されてるなと思うのは
「マリリン・ショット」って、
「マリリン・ショット〜!」と
刈屋さんが適当に叫んでるわけではなくて
本橋選手が得意としている
ガードストーンをスイープするショットのことを
「マリリンの得意技のショット、
マリリン・ショット」と言ってるんですよね。 |
刈屋 |
そうなんです、そうなんです。 |
永田 |
それも伝わってないですよね(笑)。 |
刈屋 |
伝わってないです(笑)。 |
永田 |
あと、刈屋さんがカナダの放送席に
「あの選手を『マリリン』と呼んでくれ」
と押しかけた、みたいに伝わってますけども
あれもカナダの放送席から
日本選手の呼びかたについて問い合わせがあって、
それを確認して、言ったわけですよね。 |
刈屋 |
そうです。
向こうが日本の選手の呼びかたを
確認させてくれと言ってきたので
「メグロ?」「めぐろ」、
「モトハシ?」「もとはし」と言って
ただし、本橋選手は
「マリリン」と呼ばれてるから
「マリリン」と放送してくれ、と言ったんです。 |
永田 |
そしたら向こうもおもしろいわと、
オッケーオッケーと(笑)。 |
刈屋 |
オッケーと(笑)。 |
永田 |
だから、勝手に呼んだ「マリリン」ではなくて、
じつは、いろんな関係者に確認をとったうえでの。 |
刈屋 |
「マリリン」なんですよ。 |
永田 |
そうですね。
根拠のある「マリリン」(笑)。 |
刈屋 |
実際、試合中の彼女たちの会話を聞くと、
「マリリン」って言い合ってますからね。
だからやっぱり‥‥その‥‥よかったのかな? |
永田 |
ただ、まあ、刈屋さんのあの口調で
「マリリン」と言うのを聞いて、
違和感がまったくなかったかというと
‥‥ないわけではないです。 |
刈屋 |
あっはっはっは。 |
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