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刈屋 |
すいません、どんどんしゃべってしまって。 |
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永田 |
いえいえ、おもしろいですし、
なんというか、助かります(笑)。 |
刈屋 |
もっと、メダルの予想とか、
そういう具体的なことを
言ったほうがいいですよね。 |
永田 |
いえいえ、そんな(笑)。 |
刈屋 |
でも、はじめに言っておきますけど、
アテネのときの金メダル16個というのは
ほんとうに、まれなことだと思いますから、
アテネを基準に考えることは
やめたほうがいいと思います。 |
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永田 |
うん、そうですね。 |
刈屋 |
もう奇跡ですから、あれは。 |
永田 |
(笑) |
刈屋 |
やっぱり、どうしてもオリンピックは、
みなさん、メダルの数で判断しますけど、
アテネと比べたら、かならず
「北京は惨敗」っていうことになりますから。
そうではなくて、テレビを観ている人は、
選手がほんとに力を発揮できたのか、
精一杯の力を、最大限の力を、
そこで発揮できたのか、発揮できるのか。
その部分を思いっきり応援してもらえたら、
いちばんいんじゃないかな、と。
やっぱりメダルは、そのときの運とか、
いろんな要素がありますからね。
なんというか、まったく根拠を説明できない
ひとつの国としての流れとかね。 |
永田 |
ありますねー(笑)。
アテネの日本はとってもいい流れだった。 |
刈屋 |
そう! |
永田 |
柔道が大きかったですよね。
やっぱり、谷選手と野村選手で
最初に金ふたつとったのが大きかった。 |
刈屋 |
そうなんです、そうなんです。 |
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永田 |
ベースとなる実力はもちろん必要で、
そのうえで運や流れが呼び込めないと
ああいうふうにはならないんでしょうね。 |
刈屋 |
そうですね。
で、ベースとなる実力の部分というのは
ちゃんと分析することができるんです。
選手個人個人はもちろん、ひとつの国として、
世界に対してどういう位置にいるのか、
あるいは、どう目指していて、
どういう段階にあるのか、
というようなところですけど。 |
永田 |
なるほど、なるほど。 |
刈屋 |
たとえば、日本は、
東京オリンピックに向けて全体を強化して、
そこで金を16個とったわけです。
いわばそこがひとつのピークですから、
4年後の大会は力が下がります。
けれども、ピークからやや落ちた程度というか、
ピークを極めた余力がありますから、
そんなに極端にガクンと下がったりはしない。
ですから、その後、
メキシコで11個、ミュンヘンで13個と、
2大会連続で二桁の金メダルをとってるんです。
ところが、そこから15年くらい経つと、
余力がなくなり、ガクッと力が落ちて、
ソウルやバルセロナでは4個、3個、
というふうにレベルが落ちていくんです。
で、それじゃいけない、というので、
ジュニアからしっかり強化をはじめるんですが、
やっぱりそれには10年から20年かかるんです。 |
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永田 |
あ、ソウル(1988年)と
バルセロナ(1992年)から数えると、
アテネ(2004年)がばっちりその位置ですね。 |
刈屋 |
そうなんです。
ソウルとバルセロナからはじめたことが
アテネで花開いたということですね。 |
永田 |
となると、今回の北京は‥‥。 |
刈屋 |
国全体の大きな勢いで考えるなら、
アテネの余力ととらえるべきでしょう。
もちろん、振れ幅は生じると思いますが、
ふつうに分析していくと、
金メダルの数は、ぼくは、半分。
8個くらいだろうなと思ってます。 |
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永田 |
わ。あっさり予想を。 |
刈屋 |
(笑) |
永田 |
そんな俗なことを訊いちゃ
失礼かなと思ってたんですが、
あっさり予想してくださいました。
金メダル、8個。 |
刈屋 |
あくまで、個人的な目安ですよ。
しかも、運や流れをまったく考慮してませんから。
だから、予想のひとつの基準というか、
ここからいろいろ足し引きしていけば、
ほんとうの予想になると思います。 |
永田 |
なるほど(笑)。 |
刈屋 |
そういえば、日本では、
獲得メダル数の予想というのを
正式な形ではやりませんよね。 |
永田 |
そうですね。
雑誌や新聞のコラムのような形で
企画としてやるくらいで。 |
刈屋 |
したほうがいいのか、しないほうがいいのか、
そこは議論が分かれると思いますが、
事実としていうと、アメリカのテレビ局は
メダルの予想を確実に、厳密にやるんです。
なぜやるかというと、広告をとるためです。
つまり、この種目では絶対にメダルがとれる、
という予想があるからこそ、その種目の中継に
たくさんの広告料がとれるわけなんです。 |
永田 |
はーー。なるほど。 |
刈屋 |
だからこそ、彼らは、的確に、厳密に、
客観的にメダル数を予想するんです。
だから、たとえばトリノオリンピックのとき。
日本では、事前にメダルラッシュが囁かれつつも
フタを明けてみれば惨敗、
というかたちの報道でしたよね。 |
永田 |
そうですね。 |
刈屋 |
つまり、なんとなく楽観的なムードで、
あれもとれるんじゃないか、
これもメダル圏内じゃないか、
というふうに報じられていたからこそ、
結果的に惨敗、というかたちになった。
ところがね、あのとき、
現地のトリノに私たち報道陣が入って、
アメリカのテレビ局の予想を聞くと、
「日本は銅メダル2個だ」っていうんです。
すなわち、スピードスケートの加藤条治選手と
フィギュアの荒川静香選手だと。 |
永田 |
うわ、ほぼ当たりじゃないですか。 |
刈屋 |
そう。だから、極めて適切な予想なわけです。
加藤条治選手は残念ながら
メダルに届かなかったんですが‥‥ |
永田 |
直前のレースで選手が転倒して、
製氷作業のあいだ、リンクでずっと
シューズを履いたまま待たされるという
アクシデントがあったんですよね。 |
刈屋 |
そうです。
実力が発揮できなかったんですよね。
逆に、荒川選手は実力を十二分に発揮して、
見事に金メダルをとった。
でも、ベースとなる実力の評価で、
銅メダル2個というのは、極めて適切です。 |
永田 |
そうですね。
そして、日本のメディアに
その意識があったら‥‥。 |
刈屋 |
決して「惨敗」なんていう
ことばは使わなかったでしょうね。
むしろ、全体的には、
実力相応の力を出し切った
ということになったんじゃないでしょうか。
そう考えたときに、日本の場合は、
どうして、ああも楽観的な予想というか、
見通しになってしまうのか? |
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永田 |
そうですね。 |
刈屋 |
なぜ、ああいうふうになるかというと、
各競技団体が、目標を言うわけですよ。
私たちは、メダルいくつが目標です、と。
そうすると、その目標が報道される。
それを根拠に、この競技もメダル争い、
こっちの競技は金メダルの可能性、
というふうになって、
みんなもそれを信じ込んでしまう。
イメージとして植えつけられてしまう。
で、本番になると、メダルに届かない。
ある意味では実力どおりだとしても、
「どうしちゃったんだ?」ということになる。 |
永田 |
はーーー。そうか。
最初っから冷静な予測じゃないんですね。 |
刈屋 |
そうなんです。
もしも最初から冷静な予測を
みんなが持っていれば、
「メダルを!」というよりも、
競技そのものを純粋に
応援できるんじゃないかな、
とも思うんですけどね。 |
永田 |
なるほどー。
でも、それは簡単なようで難しいですね。
日本のメディアで
「今度のオリンピックの予想は
銅メダル2個です」って言ったら、
なんだこの悲観的なテレビ局は?
って思っちゃいますもんね。 |
刈屋 |
だから、そこが難しいんですよ。
行く前に、そんなことを言ったら
水を差すとか、なんで盛り上げないんだ、とか、
そういう批判を受けると思います。
でも、オリンピックを純粋に楽しむために、
その選手をほんとうに応援するために、
冷静な分析が、ガイドとして発表されても
いいのかな、という気もするんです。 |
永田 |
少なくとも、「ほぼ日」では、
その前提も含めて発表できますよ。
ええと、ガイドラインとして
「金メダル8個」。
これで、いいですか? |
刈屋 |
ははははは。 |
永田 |
これは、刈屋さんの予想というよりも、
「ほぼ日」が北京オリンピックを
楽しんでもらうために提示する、
ひとつのガイドラインです!
‥‥ええと、刈屋さん、
ちなみに金メダル8個の内訳は? |
刈屋 |
(笑)。
それでは、あくまでも目安として。 |
永田 |
はい、目安ですとも。 |
刈屋 |
女子レスリングで2個。
柔道で2個。水泳で2個。
あとの2個は、
野球、体操、女子マラソンの3つから、
「2個とれたらいいな」という予想です。 |
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永田 |
あ、いいですね。
冷静な分析と、
ちょっと気持ち的な予想も入ってて。 |
刈屋 |
いいでしょう(笑)? |
永田 |
ちなみに、柔道の2個は、
誰と誰と踏んでますか? |
刈屋 |
まず、上野選手(女子70キロ級)。
あと、鈴木選手(男子100キロ級)か、
柔ちゃん(谷選手:女子48キロ級)か。 |
永田 |
あ、柔ちゃんが入ってるんですね。 |
刈屋 |
可能性は十分ありますよね。 |
永田 |
柔道ってだいたい軽量級からはじまりますから、
谷選手が金メダルをとると、
日本チーム全体がのっていけるんですよね。 |
刈屋 |
そうなんですよね。
アテネの勢いが出ますよね。
だから、谷選手が金をとれたら、
8個よりも増えて、二桁も夢ではなくなります。 |
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永田 |
水泳の2個は、北島選手が1個と。 |
刈屋 |
あるいは北島選手がもうひとつ。
もしくは、背泳ぎの彼、18歳の入江くん。 |
永田 |
あー、入江くん。彼はいいですよね。
天才肌だし、ルックスもいいし、
ちょっと精神的なもろさが
あるところもスリリング。
いまも大人気ですけど、
北京ではさらに人気出ると思うなー。 |
刈屋 |
というようなところですかね。 |
永田 |
女子レスリングは、まあ、
誰がとってもおかしくないけれど、
吉田選手を中心に、最低でも2個と。 |
刈屋 |
はい。おおまかなガイドとしてね。 |
永田 |
ありがとうござました。
はー。訊きたいこと、みんな訊いちゃった。 |
刈屋 |
え、そうですか?
まあ、そう言わずに、
もっと訊いてくださいよ(笑)。 |
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永田 |
もちろん、もちろん(笑)。
(続きます!)
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