糸井 |
川相さんは、現役時代に
「職人」って言われてましたけど、
あれ、呼び名として便利だから
そう言ってただけで、
ぼくは必ずしも「職人」的なところが
身上の人じゃないと思ってるんですよね。
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川相 |
ぼくもよくわかんないですけど(笑)。
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糸井 |
たとえば、川相さんって、
全体のことを考えるのがそうとう好きでしょう?
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川相 |
ああ、好きですね。
それはたぶん、子どものころからです。
ぼく、小学校、中学校と
チームがあんまり強くないところだったんですよ。
だから、全体のことを
考えざるをえない環境だったんです。
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糸井 |
あー。
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川相 |
だから、どうやったら勝てるか、
っていうのを考えざるをえなかったし、
また、自分もそれに向いてたんですね。
練習メニューとかも
ぜんぶ自分で考えてましたし。
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糸井 |
だから、自分の専門をこなす職人というよりは
全体を熱く引っ張っていく人だと思うんですよね。
あの、ぼくは以前、
川相さんの同級生だったっていう人に
会って話したことがあるんですけど、
川相さんは、生徒を代表して
先生に文句を言いにいってくれるような
人だったって言ってましたよ。
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川相 |
ああー、そういうタイプでしたね。
それは巨人に入ってからもいっしょで、
寮の食事があまりにも代わり映えしないんで、
選手を代表して寮長に文句言いに行ったら、
「おまえ、もう寮を出ろ!」って
追い出されたんですよ(笑)。
まぁ、でも、寮を出られて、
ラッキーといえばラッキーだったんですけど。
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糸井 |
ようするに、みんなが言わないなら、
オレが言うわ、ってことですよね。
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川相 |
そうです、そうです。
そのときも先輩が言ってたんですよ。
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糸井 |
ちなみにそれって誰?
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川相 |
Mさんとか。
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赤坂 |
ああ、いまはテレビで活躍中の
Mさんね(笑)。
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川相 |
「あ、だったらぼく、言いますよ」って。
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糸井 |
それ、目に浮かぶわ(笑)!
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川相 |
まぁ、みんなを代表して言うのが
好きなわけではなかったんですけど、
なんか、そういう役割だったんですよね。
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糸井 |
藤田さんも川相さんが
そういう役だっていうのをよく言ってましたよ。
けっこうアイツ、言いたいこと言うんだよって。
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川相 |
(笑)
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糸井 |
でも、そういう役割でありながら
あんまり憎まれないっていうことは、
ただ怒ってるわけじゃなくて、
正当なことを言ってるんだなって
わからせる力があったっていうことですよね。
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川相 |
そうですねぇ。
まあ、それがいいところなのか、
わるいところなのか、わからないですけど。
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糸井 |
でも、資質としてはやっぱり、
チーム全体を引っ張るタイプですよね。
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川相 |
そうですね。
けっこう、自分が思った方向に
突っ走ってしまいますから。
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赤坂 |
たとえば、こんな感じでね。
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糸井 |
来た来た(笑)。
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赤坂 |
川相、ベンチ裏で大暴れ!
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川相 |
これ、カメラマンにバットを
ふりかざしたときじゃない?
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赤坂 |
うん、そう。
「なに、撮ってんだよ!」って。
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糸井 |
わるい顔してますねぇ(笑)。
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川相 |
これ広島戦でしょう?
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糸井 |
これも覚えてるんだ(笑)。
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川相 |
広島戦です。
ボロボロに負けた試合のあと、
ベンチ裏のミラールームで
ひとり暴れてたら、
カメラマンがドアの隙間から
カシャカチャって撮ってたんですよ。
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糸井 |
で、「なに撮ってるんだ!」と。
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赤坂 |
たしか、この一件以来、カメラマンは
ここまで入っちゃいけないことになったんです。
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糸井 |
はははははは。
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赤坂 |
これ、かなり暴れてますね。
ほら、ここ、ゴミ箱倒れてます。
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川相 |
ひどいねぇ。
スパイクも転がってるし。
これ、何年ですか?
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赤坂 |
95年ですね。
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川相 |
95年ってことは‥‥。
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赤坂 |
ええと、「10.8」に勝ったあと、
日本一になった翌年。
ってことは、野村ヤクルトが
日本一になった年ですね。
ほら、えーと、巨人が広沢さん取って、
ハウエル取って、シェーン・マック入れて。
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糸井 |
あーー、ぐしゃぐしゃな年だ。
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赤坂 |
それで、取られたヤクルトが
オマリーを補強して、勝っちゃって(笑)。
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糸井 |
巨人にとってはひどい年でした。
だから、この暴れてる川相さんっていうのは、
ある意味、巨人ファンの代弁者なんですよ。
ここに書いてある見出しの
「8月反攻どころか‥‥」っていうのが
この年のファンの気持ちを
如実に表してますよね。
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川相 |
そうですね(笑)。
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糸井 |
この1年、どうしてくれるんだ、
みたいな気持ちなんですよ、ファンは。
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川相 |
ほんと、そうですよね。
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糸井 |
いやぁ、しかし、
なにかと派手ですね、この選手。
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赤坂 |
そうなんですよ(笑)。
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糸井 |
「職人」どころか、こう、
「地味」を売り物にした
「派手」な選手ですよね(笑)。
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赤坂 |
かたや、スクイズで一面、
かたや、暴れて一面ですから。
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川相 |
いやー、
暴れて一面になる選手って
なかなかいないよね。
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赤坂 |
いないですよ。
(つづきます) |
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