糸井 | どうも、いらっしゃいませ。 はじめまして。 |
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中井 | どうも、はじめまして。 |
糸井 | どこかで、会ってそうなんですけど‥‥。 |
中井 | お会いしてないんですね。 でも、こうして、 はじめてうかがった会社で いきなり「給食」っていうのも‥‥おいしいです(笑)。 |
糸井 | ああ、ありがとうございます(笑)。 中井さんは、 苦手な食べものって、あるんですか? |
中井 | ぼくは「しめ鯖」ですね。 |
糸井 | へぇー‥‥。 |
中井 | この仕事をはじめたころ、 京都で「鯖寿司」をすこし食べてみたら なんとも言えない風味に 一切、口が動かなくなっちゃって。 一生懸命、上顎と下顎で噛むんだけど、 「口の動かし方って、どうするんだっけ?」 みたいな(笑)。 |
糸井 | そうなんですか(笑)。 |
中井 | あと、「あたった」ことがあるわけじゃ ないんですけど、 「生牡蠣」もあんまり得意じゃないです。 フライになってれば平気なんですけど。 |
糸井 | あの、中井さんって ひっきりなしにお見かけしてるような 気がしてるんですが、 お休みって、そんなにはないですよね? |
中井 | ありますよ。 |
糸井 | なんか、上手に休むコツってあるんですか? |
中井 | 同じ時期に「仕事を重ねる」ことはせず、 次の仕事に入る前は必ず「役を切り替える」ための リセット期間を作ります。 ひとつの仕事から学ぶことが多いので、 ぞんざいにしたくなくて。 ものすごく良いお話を同時にいただいても、 絶対、チョイスは「どちらか」にしてます。 |
糸井 | どうしても、選び切れないときとか‥‥。 |
中井 | そういうときは「人」で 決めさせていただいてますね。 |
糸井 | なるほど。 |
中井 | お仕事の内容で決められない場合には 携わっている人の情熱で。 それを自分の尺度にして決めています。 |
糸井 | 主役だとか脇役だとかは、関係なく。 |
中井 | 関係ないです。 何らかのメッセージを 伝えることのできる仕事か、どうか。 そこが、ポイントですね。 |
糸井 | それって、若いころからわかってました? |
中井 | 最初は無我夢中だったですよね。 まだ駆け出しのころは 「受け容れられない」ことのほうが多かったんですが 「それでもいい」と思ってやってました。 |
糸井 | そうですか。 |
中井 | でもやはり、 観た人に「なんか幸せになったよ」とか、 「泣いたよ」って言っていただけるような そういう作品に、関わっていきたいですね。 お客さまが喜んでくれることがいちばん‥‥。 |
糸井 | 判断材料にしやすい。 |
中井 | そうかもしれません。 でも、そういう作品に限って 批評家のかたには、ウケなかったりしますね(笑)。 |
糸井 | そうか‥‥そうですか。 でも拝見してると、三谷(幸喜)さんが 中井さんのこと、 すっごくおもしろく使うじゃないですか。 |
中井 | 三谷さんとは、考え方も合うんです。 すべて「お客さんが中心」というね。 |
糸井 | なるほど。 |
中井 | 彼がかならず言うのは 「ぼくの演出はここまでです。 ここから先は、 お客さんに教えてもらってください」と。 |
糸井 | ダメ出しも、お客さんの反応を見て? |
中井 | そう。 |
糸井 | はー、おもしろいですね。 最近、佐藤浩市さんと「対」になることが けっこうあると思うんですけど‥‥。 |
中井 | ええ。 |
糸井 | 観ているほうからすると、 おふたりに同じような匂いを感じるんです。 で、そのふたりがぶつかったとき、 ものすごいおもしろさが出るというか‥‥。 |
中井 | 以前、映画の『壬生義士伝』に出たんです、 ぼくと佐藤浩市さんで。 で、大阪へロケに行ったとき テレビ局に 「ゆるキャラ」みたいなのがいたんですよ。 |
糸井 | はあ。 |
中井 | たこやきみたいな、サルみたいな。 |
糸井 | 「たこやき」かつ「サル」ですか(笑)。 |
中井 | そのキャラがね、 「テ、テ、テ、テレビ大阪‥‥」って 歌いながら踊ってるんですけど‥‥。 |
糸井 | はい。 |
中井 | テレビ局の人が 「テ、テ、テ‥‥という部分を 佐藤浩市さんと一緒に やっていただけませんでしょうか」と。 |
糸井 | ずいぶん簡単に言いますね‥‥(笑)。 |
中井 | そう、で、ぼくは 「ええと、すみません。 意味がわからないんですけど」と(笑)。 なにしろ『壬生義士伝』という映画は 浅田次郎さん原作の幕末の話なんです。 |
糸井 | いい話ですよ。 |
中井 | そう、号泣ものの話なんです。 それなのに「テ、テ、テ‥‥」とは(笑)。 |
糸井 | はい(笑)。 |
中井 | いやね、それをやったら すこしでも『壬生義士伝』の集客の足しに なるのならば、まだしも。 で「佐藤さんにも、聞いてみてくださいよ」と。 |
糸井 | 佐藤さんも、同じ意見だろうと。 |
中井 | そうしたら彼、なんて返事したかというと 「中井がやるならやるよ」と(笑)。 |
糸井 | おおー(笑)。 |
中井 | 彼、そういうところ、すごく大らかなんです。 こっちが唖然とするぐらいの許容範囲を 持ってるというか‥‥ともかく 「彼にはかなわないなあ」と思いましたね。 |
糸井 | でも、いいコンビですよね。 観てるぼくらにしてみたら おふたりが、いっしょにいるってだけでもう すでにおもしろくなってますから。 |
中井 | まいったなあ(笑)。 |
2013-05-17-FRI