欽ちゃん!
萩本欽一さんの、おもしろ魂。

放送作家の育てかた。


糸井 「パジャマ党」という
放送作家の集団を作るときに、
「自分に自信があるわけではない人」
ばかりを集めていた萩本さんが、
その集団を食わせていける自信があった、
というのは、すごいです。
萩本 いや、
食わせる自信じゃなくて、
「こいつらが、食わしてくれるだろう」
っという自信が、あったんです。
糸井 おぉー。
萩本 「こいつら、かならずモノになる」
それはもう、はっきりしていました。
糸井 すごいセリフ!
馬鹿ばっかり集めたけど、
そいつらが、自分のことを
食わしてくれるっていう
自信があった、という……。
萩本 ええ。

みんな、すごい作家になると思った。

テレビ局には、作家になるための
作家の修業をしている人ばかりいるでしょう?
みんな、シナリオ学科とかで
お勉強した人ばかりで……。

コメディアンから教わった作家、というのは、
これは今までにいないんだから、
「いない」ということは、
かならず何かになる、ということなんです。

なにしろ、
ぼく自身は書く勉強をしていないんです。
だけど、この関係は、
かならず何かになる、と思いました。


「何科、行ってるの?」
そうすると、法科とか商業と言うのに、
「何になるの?」
「マージャン屋」
「すごい夢だね、おまえ。
 大学行って、マージャン屋になるの?」
それは、芸能界で活きるから、
ぜひ作家になってくれ、と……。
糸井 今、萩本さんのお話を
聞いているから言えるんだけど、
放送作家にとってのお客さんって、
「芸人さん」ですよね。

だとしたら、
芸人さんの注文にあわせて、
素人だった人が、
商品としての「文」を書いたほうが、
いいものを作るに決まっているかもなぁ。
萩本 そうなんです。
糸井 「どうだ、これがいいだろ?」
という商品よりも、
「お客さんが、
 こうしてくれと言ったなら、
 しょうがないから、
 それにあわせて作ろうか」
そういう商品のほうが、
うまくいっているんですよね。

ものを作る力よりも、むしろ、
どんなものを、
どういう人が欲しがっているかを
わかるほうが
大事になっているというか。

今のお話って、
それにぴったりはまりますね。
萩本 作家を入れようと思った理由は
ぼくがバカだからなんです。
バカが一生懸命に
言葉や漢字をおぼえるよりも、
作家を入れたほうがはやいか、と。
糸井 萩本さんは、口でしゃべって、
「こんなことを書いておいて」
というようなことをやってたんですか?

作家としては、
それに寸法を合わせたりするという。
萩本 ええ。
糸井 つまり、作家がせっかく書いたものを、
「あぁ、違う、ごめんごめん、もう1回」
なんてことを、
萩本さんは、くりかえしていたんですか?
萩本 そうです。
糸井 そりゃあ、
おもしろいに決まっていますよね。
「やる側のリズム」が、
先に、大事にされているんだから。
萩本 あ、それはほんとにそうです。
こちらのリズムで書いてもらう。

作家が書いたときに、
むずかしいのは
「これ、本としてはスゴイですよ」
というものなんです。

それを演者がやると、
すごく窮屈だけど、演者よりも
ディレクターのほうが上に立っちゃうと、
我慢してやることになるから、
そこでテレビがダメになるんですね。

作家には、セリフについては、
「バカでいいから、足らなくしとけ」
と言うんです。

足らないと、ディレクターが考えるか、
演者が考えるか、するから。

それと、前提条件としては、
「書いたものを直さないでくれ、
 というのはないんだよ」と言ったの。

「あとは、半分足しといてください」
そのほうが、みんながたのしくできる。
そういう作家に、ぜひなってほしい、と……。
糸井 要するに、番組は、
「みんなのもの」だってことですよね。
萩本 そうです。
ですから、うちの作家は、みんな、
ディレクターから、
変えたいんだけどと言われても、
「ぜんぜん、平気です。変えてください」
「早く気がつきゃよかった! 直します」
こんなふうなんです。
糸井 そういうことのよさは、
若い頃には、わからないですよね。
「俺の料理をどうだ?」
みたいなところが、若者はいつもあるから。

だけど、萩本さんのところの作家さんたちは、
基礎がなかったから平気だったんでしょうね。
萩本 ええ。
笑いが何かっていうのだけは教えたんです。

書き方は、
ディレクターに教えてもらいなさい、と、
ディレクターのところに連れていくんです。
「何も知らない作家なんで、教えるように」
「わかりました」
それで、ディレクターは一生懸命、
「バカ、おまえ、ここはこうするんだ」って。
糸井 それを、1960年代後半ぐらいに
やってたわけですよね。
萩本 そうですよね。
糸井 それは、ほんとに、すごい。
  (明日に、つづきます)

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2004-09-09-THU

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