例えば、阿寒の森で、あなたと二人、
我を忘れて転げ回っていると思ってください。
全身で森を楽しんでいるわけです(笑)!
ふと、疑問がわいてきます。
二人は、はたして、
同じ森を、というか、
同じ世界を楽しんでいるのか?
脳科学で言うところの、
外界を脳の内部に再構築したものが世界であるなら、
それぞれが持っている五感の性能は異なっているし、
集めた情報を処理する脳みその能力も異なるわけで、
と、なると、
ぼくが存在している世界と、あなたの世界は、
もしかしたら、別ものなの……?
目の前にあっても気づかないのであれば、
それは存在してないのと同じこと。
ぼくの世界には、きのこがたくさん生えてますが、
あなたの世界ではどうでしょう?
まあ、この「きのこの話」を読めば、
毎週、確実に、1本ずつ、あなたの世界に、
きのこを増やしてさしあげます、はい。
だから何なのだ、と怒られる前に、
きのこの話に逃げることにします……(笑)。
今回ご紹介するのは、
アシグロホウライタケです。
コケの上の落葉から発生しています。
ピントを合わせたきのこの傘が、
直径5mmに満たないくらいなので、
あちこちに点在する別のきのこがどれほど小さいか、
おわかりになるかと。
まあ「普通の世界」に住む方々に、
このきのこを探して、と言っても難しいでしょう。
ほんと、小さなきのこですからねえ。
それだけに、じっくり見たときの感動は、
大きいのではないかと思います。
白い傘の表面には放射状の条線が見られ、
裏側には白から暗色に変わるひだがしっかりあります。
そう、こんなにも小さいのに、
きのこはきのこなんですよねえ……。
柄は細く、下側が黒くなっています。
これが「あしぐろ」の名前の由来です。
これだけ小さいきのこなので、
食べるにはまったく適しません。
もし、毒があったとしても、
ひとつふたつ食べたところで、
毒にあたるほどの量にはならないでしょう。
(試食はオススメできません)
ちなみに、
今後のあなたの人生に、
きのこ観察が加わったところで、
幸せになれるかどうかは保証できません(笑)。
あしからず。
何回も言っておりますが、
思考、空想、妄想、想像にふけり、
わたしだの、世界だの、何だのと、
きのこを相手に哲学をするのも、
森へ出かける楽しみのひとつです、はい。