ツバキ、キンカク(菌核)、チャワンタケ。
なんか、三題噺が始まりそうな名前ですが、
まあ、この名前が、このきのこの特徴を、
きっちりと表しているわけでございます。
ツバキキンカクチャワンタケは、
ツバキの花や葉を養分にして生きるきのこ。
ですから、ツバキが生えているところでしか、
(ツバキの仲間のサザンカでもOK)
見ることができません。
逆に言うと、
ツバキが生えている場所であれば、
けっこう当たり前のように見かけるきのこなんです。
色は地味だし、とても小さいので、
きのこに興味を持ってない普通の人々は、
きっと、生えていても気づかないでしょう。
ツバキの花や葉を養分にする、と言っても、
それは地に落ちてからのこと。
古いツバキの花は花首からぽとりと落ちるので、
縁起が悪くお見舞いには不向き、なんて言われますが、
それゆえ、形がしっかりと残っているので、
きのこが望む栄養をたっぷり含んでいるのかも。
ツバキキンカクチャワンタケは、
春、ツバキの花が咲く頃に胞子を飛ばします。
それが地上に落ちた花や葉っぱの上に落ちると、
菌糸を伸ばして栄養を吸収しつつ成長し、
秋の終わり頃になると、硬い塊、菌核を形成。
やがてまた春が訪れ、ツバキが花を咲かせる頃に、
子実体、つまり、きのこを発生させる、
というサイクルで生きているんです。
面白い生態でしょ。
菌核をつくらず、古くなった花の塊から、
そのままきのこが発生していることもあります。
きのこは、黄土色〜褐色で、やや弾力があり、
最初こそ茶碗のような形をしてますが、
成長すると開いて皿のようになります(笑)。
「茶碗」「お皿」の直径は0.3〜2cmくらいで、
菌核から発生しているものは、長さが10cmにもなる、
細くてひょろひょろした柄を持っています。
胞子は、お皿の表面から放出されます。
食不適。
さもあらん。
もし、このきのこを見つけた場合は、
じっくりと観察し、不思議な生態に想いを馳せ、
きのこの世界に心ゆくまで浸ってくださいませ(笑)。
北海道阿寒の森にはツバキは生えてません。
この写真は群馬県で撮影しました。