つい最近まで、この手の、
「袋」からぶはぶは胞子を放出するきのこは、
ホコリタケの仲間として分類されている場合が多く、
みんなひっくるめて「腹菌類」と言われていました。
ところが、昨今では、きのこも、
DNAの情報を使った分子系統学的分類が主流になり、
見た目を重視していた今までの分類は、
根底からひっくり返されてしまいました。
なんせ「腹菌類」という言葉が、
分類から消滅しちゃったんですからねえ……。
まんまるきのこのホコリタケは、
傘と柄を持つシイタケなどと同じく、
新しい分類では、ハラタケ目ハラタケ科に。
見た目はまったくの別物でも、
遺伝子的には近いということですな。
でも、まあ、きのこの本格的な分類は、
上級者とか専門の研究者にまかせて、
われわれ一般的なきのこファンは、
まず、その見た目を心ゆくまで楽しめばよいかと。
分類はもとより、この手のきのこは、
「ツチグリ」なのか「ツチガキ」なのか、
名前もややこしいんですよね。
今回ご紹介するきのこは、ヒメツチグリ。
以前ご紹介したのは、フクロツチガキ。
似てるけど、違う。
違うけど、似てる。
面倒くせ〜(笑)。
さて。
ヒメツチグリは、夏から秋にかけて、
マツの根本の腐植土で発生します。
幼菌時は球形で、直径5〜8mmくらい。
内皮と外皮の二重構造をしています。
成熟するにつれて、
紙のような手触りの内皮の内側に胞子が形成され、
最後にはてっぺんにくちばし状の穴が空きます。
硬くて厚い外皮は、4〜6裂片に避け、
湿度を感じると、星形を通り越して、
一つひとつの裂片が脚のようになって立ち上がり、
むき出しになった内皮が主に雨粒の刺激を受け、
ぶほぶほと胞子を放出するというわけです。
ツチグリの幼菌を食用にする、
という話を耳にしたことがあるのですが、
(おそらくそれほどおいしくないはず)
形は似ていても、こちらは、食不適。
そもそも、幼菌は、ほぼ地中にあるので、
探すのは本当に大変だと思います、はい。
きのこの分子系統学的分類が進むと、
見た目くらいしか同定の判断材料がない我々は、
けっこう困ったことになるかもしれません。
「あ、それ、ホコリタケ系」とか言って、
名前を知らないことを誤魔化していたのが、
通用しなくなっちゃいますから!
別の誤魔化し方を考えないと……(笑)。
ちなみに、この写真は、長野県で撮影しました。