フィルムカメラ、あるいは、
黎明期のデジタル一眼レフカメラは、
ファインダーをのぞかなければ、
撮影対象を見ることができないので、
地面から直接生えているような小さいきのこを、
同じ目線で、つまり、カメラを地面に置いて撮るのは、
けっこう大変でした。
ローアングルファインダーと言って、
ファインダーの光軸をぐにゅっと90度曲げることで、
真上からのぞくことを可能にする機器もあるのですが、
けっこう高価だったので、いつも腹ばいになって、
ファインダーの高さに視線を合わせて撮影してました。
最近のデジタルカメラは、
撮影対象を、背面の液晶画面で確認できるし、
背面液晶そのものが可動式だったりするので、
時代とともに便利になっていることを実感します。
それにしても、森で、腹ばいになる行為は、
すごく癖になります(笑)!
一度、この世界を知ってしまうと、
抜け出せなくなってしまうこと間違いなしです。
きのこを見つけたら、腹ばいになって、
重ねた手の上に顎を乗せてじっくり向き合います。
すると、まず、匂いに気づきます。
土の香り、落ち葉の香り。
想像するよりぜんぜんいい香りなんです。
音の聞こえ方も、立っているときと全然違います。
視線を低くしているので、
きのこと地面と周りの木々との関係性に、
まったく新しい世界を見るような気すらします。
本当に感動的なんですよ。
「ねえ、どうしてここから生えたの?」
と、思わずきのこに話しかけたりして(笑)。
じっくり観察していると、
カバイロテングノメシガイが、
この場所に生えたいくつもの理由のうち、
ひとつくらいはわかるような気がします。
ここは、かつて木だったものが、
長い年月にわたり、腐食がどんどん進んだ結果、
ほとんど土壌のようになった状態の場所。
好物がたっぷりあるのでしょう、きっと。
さて。
カバイロテングノメシガイは、
夏から秋にかけて発生します。
樺色は、英語で、reddish yellow と言いますが、
全身が、やや赤みを帯びたような黄色〜黄褐色で、
乾燥したり時間が経つとやや黒みを帯びます。
頭部はやや太い長楕円形で、
扁平で深い縦じわを持つものもよく見かけます。
高さは2〜8cmほどです。
「メシガイ」とは、
ご飯をよそうときに使うしゃもじのことで、
このきのこを見ていると、なんとなく、
そんな形は連想することができるのですが、
「テング」の意味するところはわかりません。
あしからず。
食不適。
このきのこを見つけたら、
食材として意識することなく、
野に生きるひとつの生物として、
じっくり観察することにしましょう。
ちなみに、森で腹ばいになるときは、
汚れてもいい服装を用意するのもいいのですが、
ホームセンターなどで売っている、
アウトドア用の銀マットを使うととても便利です。
ぼくは、やや古いレインウェアを着込んで、
ば〜っと伏せてしまうんですけど(笑)。