ぼくの大好きなきのこです。
アラゲコベニチャワンタケ、という長い名前は、
このきのこの特徴をすべて言い表している、
と、言っても過言ではありません。
漢字で書くと「粗毛小紅茶碗茸」。
粗い毛を持つ小さくて紅色で茶碗のような形のきのこ。
見た目そのまんまの名前でしょ!
しかし、それにしても、
見事なまでの毛の生えっぷりです。
「きのこなのになんでこんなに毛が生えているの?」
と、疑問に思う方も少なくないかと。
そうですよね、不思議ですよね。
ちなみに、ぼくが、
一般の人からよく聞かれる質問のダントツ1位は、
「毒きのこはなぜ毒を持っているの?」
なのですが、
両方の質問の答えは、一緒なのです。
「わかりません!!」
進化の過程でたまたま獲得した特徴のひとつ、
としか今のところは言えないんですよねえ。
まあ、今後、菌類の研究が進むにつれて、
理由のいくつかはきっと判明していくでしょう。
きのこの毒に関しては、
きのこを食べる一部の昆虫に対して、
防御効果があるとのデータがあるとか。
じゃあ、毛はどうなんでしょう?
「クッタの条件」と「ベルヌーイの定理」によって、
飛行機が飛ぶのと同じく胞子を飛ばす上昇気流を生む、
とかだったら面白いのになあ……(笑)。
どなたか、ぜひ、研究してください。
さて。
アラゲコベニチャワンタケは、
初夏から晩秋にかけてのけっこう長い間、
湿った倒木の上や、その周辺から発生します。
幼菌時は球形で、やがて開いてお皿形に。
真っ赤なお皿の直径は、0.3〜1cmと、
小さな小さなきのこです。
写真をよくご覧いただくと、
派手な紅色をしたお皿の内側の縁には、
長くて粗い毛が生えていて、
色がやや淡くなるお皿の外側には、
短い剛毛が生えているのがわかります。
う〜む、何と言うか、実に、生々しいですな。
このとおり、小さなきのこなので、
食べるにはまったく値しません、はい。
そうそう。
今回の写真をご覧になって、
マクロレンズで撮っているはずなのに、
ピントが合っている範囲が広すぎる、
(全部にピントが合っている)
と思った方はいませんか?
するどい!
何を隠そう、この写真は、
ピントをずらして撮影した16枚の写真を合成して、
1枚の写真として仕上げてるんです!
マクロレンズは被写体を超アップで撮影できるのですが、
ピントの合う範囲がすごく狭いんです。
人間の見た目通りに写真を写すのは、
実はすごく大変なことなんですよねえ。
たくさん写真を撮っていると、
人間の目の性能の素晴らしさに、
改めて感動せずにはいられません。