自然界には、人間にとって、
脅威だったり、役に立たなかったり、
利用価値がないものがたくさんありますが、
だからといって、直接被害を被ったわけでもないのに、
それらをすべて処分してしまえ、などと言うのは、
横暴以外の何者でもありません。
お店で食用きのこと間違えて毒きのこが売られていたら、
そりゃあすぐにも排除しなければならない問題ですが、
森の片隅に毒きのこが生えていたところで、
人間が生きていくには何の問題もありません。
でも、ときに、
毒きのこを、あるいは、知らないきのこを、
蹴飛ばしたりする人がいます。
猛省を促したいと思います。
しかし、まあ、愚考するに、
毒きのこを蹴っ飛ばすということは、
毒きのこの胞子を散布すること。
特定の昆虫が特定の植物の種子を散布する役割を担う、
という例があるように、もしかしたら、
毒きのこも特定の動物、つまり、人を使って、
胞子散布を促している可能性があるかもしれません!
そういう研究があったら面白いのになあ……(笑)。
さて。
ニガクリタケは、毒きのこ、というより、
猛毒きのこと呼ぶにふさわしい存在です。
春から秋にかけてのけっこう長い期間、
広葉樹、針葉樹の、枯木や切り株などで群生します。
傘の直径は1〜5cmほど。
初めは半球形で、まんじゅう形を経て平らに開きます。
色は淡〜鮮黄色で、中央部がやや橙褐色。
ヒダは密で、オリーブ色。
柄はひょろひょろと細長く傘と同じ色をしています。
含有する主な毒成分は、
ファシキュロール類、ムスカリン類、ネマトリンなど。
誤食すると、食後数十分から3時間ほどで、
腹痛、嘔吐、下痢などが起こり、
ひどい場合には、脱水、中枢神経系障害、
痙攣ショックなどを経て死にいたります……。
ニガクリタケを似ている食用きのこと、
見分ける場合のポイントは、大きく3つあります。
ヒダがオリーブ色であること、柄が黄色っぽいこと、
そして、生で噛むと思いっきり苦いこと!
猛毒キノコですが、ちょっと噛んでみて、
味を確認して、すぐに吐き出せば問題ありません。
(あくまでも自己責任で!)
厄介なことに、この苦味成分は、
加熱すると消えてしまうとのこと。
つまり、ニガクリタケを煮炊きすると、
苦味だけ消えて毒成分は残ったまま……。
くれぐれもお気をつけあれ。
毒きのことあまり関係ありませんが、
独りで森をうろつくとくまさんが怖くありませんか?
と、聞かれることがけっこうあるんですよね。
そんなときは、
くまさんがたくさん生息できるほど、
豊かな自然があるってことです、
と、答えています。
くまさんも毒きのこもいない森は、
まったく想像ができません。