阿寒湖から西へおよそ20km。
日本百名山にも数えられている雌阿寒岳の麓には、
広大なアカエゾマツの森が広がっています。
そのアカエゾマツの森へ入るとき、
いつも欠かさずにチェックをしている、
大木の根株があります。
高さは50〜60cmくらい。
表面はアカエゾマツの原型を留めないほど、
風化してボロボロになっているのですが、
特筆すべきは、その上部。
小さな森なんです。
何種類もの地衣類やコケが表面をびっしりと覆い、
その合間から、ゴゼンタチバナやマイヅルソウなど、
小さな可憐な花を咲かせる高山植物が、
緑色の葉を生い茂らせています。
そして、倒木上に次世代が生育する「倒木更新」ならぬ、
「切株更新」とも言うべきアカエゾマツの幼木の姿も。
特筆すべきは、この切株から、さらに、
入れ代わり立ち代わり、きのこも発生するんです。
家に持って帰りたい!
玄関、いやいや、床の間に飾りたい!
と思わずにはいられません……。
さて。
今回ご紹介する写真は、
これほどまでに力説した切株ではなく(笑)、
その隣! のやや細い切株から発生した、
ヒメダイダイタケなんです。
あしからず。
しかし、まあ、
切株上を多種類の地衣類やコケが覆っていることや、
アカエゾマツの幼木が育っていることなど、
ほぼ似通った状態であることには違いありません。
(この根株も持ち帰りたい!)
ヒメダイダイタケは、夏から秋にかけて、
林地の蘚類の間から発生します。
傘は橙色〜橙黄色で、粘性はなく、
直径0.5〜2.5cmほど。
最初は円錐形で後に中丘を持つ平らに開きます。
ヒダは疏で、傘とほぼ同色。
その中心部は柄に向かってやや長く伸びています。
柄は高さ1〜5cmほどで、円柱状。
ときどきやや平らになっている個体もあるようです。
食不適。
小さいし、
量を集めることも期待できないし、
食べるにはまったく適しません。
食べちゃいたい!
とか何とか言いながら、
その愛らしさ、美しさを、心ゆくまで、
じっくり鑑賞させていただきましょう。
ちなみに、この写真で、
ヒメダイダイタケの周りに、
もくもく生えている薄緑色のものは地衣類です。
ミヤマハナゴケと言います。
コケという名前がついていて、
見た目もコケとか植物っぽいですけど、
地衣類は、菌類と植物(藻類など)の共生体なので、
分類的には、菌類。
なんとなんと、きのこの仲間なんです。
これまたかわいいでしょ。
以後お見知りおきのほどを。