われわれが通常「きのこ」と呼んでいるのは、
きのこの生殖器官である子実体のこと。
きのこの本体は、地中や倒木の中で伸び広がる、
糸状の物質・菌糸です。
生殖器官である子実体、
つまり、いわゆるきのこの主な目的は、
きのこの卵とも言うべき、胞子をつくること、
そして、それを放出すること。
次世代に子孫を残す重要な役割を担っています。
子実体の形状の違いは、
胞子の放出方法がそれぞれ異なるから。
よく見かけるのは、
シイタケやイグチの仲間のように傘を持つもの。
傘裏のヒダや管孔から胞子がさらさら?落ちます。
棒形や皿形のきのこは表皮付近で胞子がつくられ、
表面が崩れるとそこから胞子がばらまかれます。
ホコリタケの仲間のように丸いのきのこは、
成熟するとてっぺんに孔が空き、
雨粒が落ちたり動物に踏まれたりする刺激で、
ぶはぶはっと胞子を放出します。
また、ヒトヨタケの仲間は、傘を持っていますが、
子実体がつくられると短時間で液化するので、
胞子は、ヒダから落ちて風で運ばれる、というより、
その雫と一緒にポタポタと下に落ちます。
面白いでしょ〜。
きのこの楽しみ方の最たるものは、
多種多様な子実体をとことん観察することですが、
加えて、その形をした子実体が、
どんな方法で胞子を放出しているのか、
推理しつつ、謎を解く、というのも、
これまたすごく面白いと思うのです。
きのこ観察は知的推理ゲームなのだよ、明智くん。
さて。
今回ご紹介するヤマブシタケですが、
胞子をつくって放出する部分が、
なぜヒダではなく針状なんでしょうね?
しかも、針の数は、軽く100本を超えます。
う〜む……。
それはさておき。
ヤマブシタケは主に秋、
広葉樹の生立木や枯木の幹から発生します。
全体的には、ほんのり丸く、倒卵形〜球形で、
直径は5〜10cmほど。
上面を除いた全面から長さ1〜5cmほどの針を、
たくさんたくさん垂らしています。
色は初め真っ白で、後、やや黄茶色に。
内部は多孔でスポンジのような形状です。
食。
味も香りもまろやかでさっぱりした感じ。
人工栽培も行われているので、
お店で売られている場合もあるかと。
含有成分が認知症などに効くかもしれない、
という説があったりするので、
現在、いろいろ研究されているようです。
ちなみに、
最新のDNAを使った分類によると、
ヤマブシタケはベニタケの仲間なのだとか。
全然違う形なのに!
ヤマブシタケの名前の由来などについては、
かつて書いておりますのでこちらをご覧あれ。