いつも感じていることですが、
人間の目は、限られたもの、つまり、
そのとき興味を持ったものしか見えてません。
森へ行っても、コケにあまり興味がない人には、
コケは緑1色の絨毯のようなものかもしれないし、
そもそも、自然にあまり興味がない人は、
何もなかった、なんて言うかもしれません。
ここで、改めて、今回の写真を見てください。
もちろん、主役はノボリリュウタケなのですが、
画面いっぱいに、いろいろな生物が写ってますよね。
地面を覆うコケも緑一色というわけではなく、
よく見れば異なる種類が確認できます。
樹木も、草も、シダも、何種類もあります。
そう、こんな限られた範囲でも、
精緻な造形の生物であふれているんですよね。
(目に見えない生物だって、たくさん……)
もし、絵に描こうと思ったら、
見えないものは描くことができませんが、
写真には意図しない「偶然」が写ります。
それが、写真の面白いところであり、
難しいところでもあるわけです。
ぼくは、森できのこの撮影をする場合、
ついきのこを可愛く撮ることばかり考えてしまうので、
そのきのこが生えている環境については、
意識してしっかり見渡すようにしていますが、
それでも、改めて写真を見たとき、
新しい発見がいくつもあります。
だから写真はやめられません……(笑)。
それはさておき。
ノボリリュウタケは、夏から秋にかけて、
各種林内あるいは庭園などの地上から発生します。
馬の鞍のようにも脳みそのようにも見える頭部は、
波打ったり切れ込んだりを繰り返しつつ、
けっこう複雑な形状をつくりだしています。
表面は淡黄灰色で凹凸があり、
縦横いずれもおよそ6cmほどの大きさです。
柄は帯白色で、不規則で深い縦の溝が走ります。
柄と頭部を合わせた高さは10cmほどになるかと。
きのこらしからぬ形がとても印象的ですよね。
可食。
癖がない穏やかな風味で、
しこしことした歯切れのいい食感を楽しめます。
見た感じ、触った感じ、そのままです。
それにしても、自然の造形には、
驚かされ、感動させられることばかりです。
これでもし、森へ出かけたときに、
ルーペや虫眼鏡なんぞ持っていようものなら、
さらに驚愕の世界へ引き込まれること間違いなしで、
きっとその場所から動けなくなることでしょう。
森歩きならぬ、森座りを、
ぜひ、一度、お試しあれ!
きっと病みつきになりますよ。