イタチタケとか、キツネタケとか、
ネズミシメジとか、タヌキノチャブクロとか、
動物の名前シリーズのきのこを、
これまでにも、いろいろご紹介してきましたが、
今回ご紹介するきのこは、その、真骨頂でございます。
その名も、ヒグマアミガサタケ。
なんてステキな名前でしょう!
そう、北海道と言えば、ヒグマです。
間近で見ると、本当に、でっかいです。
(オスの成獣なら体長3m体重500kgなんて大物も)
写真撮影中に何度か遭遇したことがあります!
まあ、阿寒の場合、広大な森の中のほんの一角に、
人間が住む街=阿寒湖温泉があるという感じなので、
くまさんがいないわけがありません。
近々の出没情報がある場所には行かない、
鈴などで音を出して自分の存在を知らせる、など、
くまさんに遭遇しないようにするのが基本なのですが、
それでも、たまに、ばったり会っちゃうわけです。
腹ばいになってきのこの写真を撮っていたとき、
頭上の崖上で木を踏むような音がしたので、
シカだと思って「コラ〜」って叫びながら見上げたら、
くまさんがぼくを見下ろしていた、なんてことも。
ぼくが立ったらくまさんにタッチできる距離でした!
今なら笑い話になりますが、
くまさんと見つめ合った瞬間は、
全身に電撃が走ったようにビビりました……。
ちなみに、そのくまさんは、ちょっと慌てたように、
すたこらさっさとその場を立ち去っていきました。
体長2m弱のヒョロヒョロとした、
若いくまさんだったので、好奇心を押さえきれず、
撮影中のぼくを見に来たのかもしれません。
くまさんの話を始めるとキリがないので、
このあたりで、きのこの話を……。
ヒグマアミガサタケは、腐朽が進んだ倒木、
または、その周辺の地面から発生します。
「アミガサタケ」の名を持つきのこは、
春の風物詩としてファンに親しまれていますが、
例外的に、秋に発生します。
頭部は鞍あるいは脳を思わせる不規則な形。
直径は4〜6cmくらいで著しい凹凸があります。
表面は赤褐色〜黒褐色で、かつては、その色から、
トビイロノボリリュウタケ とも言われていました。
裏面は白くてザラザラしています。
柄は円柱状で、高さは10cm前後。
表面はザラザラしていて、白〜汚白色、中空です。
毒成分はよくわかっていないものの、
誤食すると、下痢や嘔吐など胃腸系の中毒症状、
さらに、腎臓肝臓に障害が出る可能性があります。
どうぞご注意の程を。
北海道はヒグマがいるから森や山へ行くのが怖い、
と思っている人は、けっこう多くいるようです。
でも、逆に考えると、
あれほど大きな野生動物であるヒグマが、
たくさん生息できるほど豊かな自然がある、
ということでもあります。
自然科学の正しい知識をしっかり身につけ、
畏敬の念、尊敬の念を忘れることなく対峙すれば、
自然は怖いことばかりではない、とわかりますよ。
ああ、今日も、阿寒の森のどこかで、
くまさんがしっかりと生きているのだなあ……。