科学の進歩は、きのこ界にも、
天変地異の大変革をもたらしつつあり、
きのこの同定、というか、分類は、
DNAの塩基配列を使った分子系統解析が、
現在では基本になっています。
似たような形をグループ化していく、といった、
「見た目」での分類は、結局のところ、
自然のしくみとはあまり関係ないことが明らかに……。
確かに、考えてみれば、「似てる」ってのは、
人間の感覚でしかありませんからねえ。
例えば、ぼくとあなたが、
目の前にある同じきのこを見ているとしても、
本当に同じに見えているかわかりませんよね(笑)。
ぼくには黒く見えているものが、
あなたには白く見えているかもしれません。
そう考えると、この世界というものは、
五感で収集した外界情報を脳みそが形にしているわけで、
ぼくとあなたがこの世界を別々に認識しているのは、
当然と言えば当然かもしれませんね。
さて、今回ご紹介するきのこですが、
ずっと、コフキサルノコシカケだと思ってました。
だって、どこからどう見ても、
コフキサルノコシカケですから(笑)。
それもそのはず、
コフキサルノコシカケは北方系のきのこなので、
阿寒の森で見かけるのは、おそらく、
コフキサルノコシカケで間違いないんです。
知っている方は知っているかもしれませんが(笑)、
この写真には、我が愛犬のはなさんが写っています。
そう、群馬県で撮影したんです。
ちなみに、ちょっとわかりづらいのですが、
きのこは、右側の木(サクラ)の下の方に、
重なって生えています!
見た目はほとんどそっくりな、
コフキサルノコシカケとオオミノコフキタケの、
違いは、一体、何なのか?
胞子の大きさと、発生地域と、
子実体の断面の形状で判断するそうです。
つまり、完璧な同定をするためには、
顕微鏡で胞子を観察しないと、
どちらのきのこかわからないんです(笑)。
でもまあ、あきらかに、
北方圏や高山ではない場所に生えているのは、
オオミノコフキタケと言っていいようです。
さて、オオミノコフキタケは、
主に広葉樹の生木から発生します。
サルノコシカケの仲間なので多年生。
つまり、年々大きく成長していくので、
1年中、いつでも見ることができるというわけ。
大きなものでは、傘の直径が数十cmにもなります。
傘はほぼ半円形で、表面は固く、灰褐色~灰色系。
ココア状の粉=胞子を帯びることが多々あります。
肉はフェルト質で、チョコレート色。
傘の裏側は白黄色で、こすると褐色に変色します。
最新の分子系統解析によると、
コフキサルノコシカケとオオミノコフキタケ以外にも、
実は、この系統には、まだ何種類か仲間がいるとか。
複雑だなあ……(笑)。
同定に不安があるときには、
このきのこは「サルノコシカケの仲間」である!
と言っておけば、間違いありません、はい。