ぼくは絵を見るのが好きなので、
仕事で上京したときなど、
ここぞとばかりに美術館をはしごします。
実は、写真を撮影するときも同じなのですが、
じっくり見ると、息をするのを忘れるんですよね。
気がつくと、すごく苦しくて……(笑)。
はあはあはあ、と荒々しい呼吸を慌てて整えます。
(人に見られるととても恥ずかしい!)
ですから、美術館を回るのも、
1日に2館がやっとで、3館目に足を運ぶと、
日帰り登山をしたくらいの疲労を感じ、
くたくたになってしまいます。
実は、フィールドできのこや粘菌を見るときも、
これがけっこう疲れるんですよ。
きのこを見つけて近づくと、コケや地衣類など、
周囲のさまざまな生き物たちが改めて目に入ります。
いつも首からぶら下げているルーペで見てみると、
その精緻で美しい造形に惚れ惚れしちゃいます。
もう、ひとつひとつが生きたアートなんですよね。
しかし、やはり、ルーペで観察するときも、
知らず知らずのうちに息を止めているので(笑)、
どんどん体力が奪われていく感じがします。
はあ、はあ、はあ、ふう。
ここで、改めて、今回の写真をご覧あれ。
アケボノアワタケの周りのモフモフ具合たるたるや、もう。
白緑色で枝分かれしているのは植物ではなく、
地衣(ちい)類のミヤマハナゴケです。
そして、緑色は、コケ植物の、ムチゴケの仲間。
ぱっと見た感じではわかりませんが、
いくつもの小さな葉が重なりあっています。
せっかくですから、拡大したのを見てみます?
こんな感じです。
こんなの一つひとつルーペで見ていたら、
そりゃあ、疲れるわ……。
あ、どんどん話がきのこから遠ざかっているぞ(笑)。
そろそろ本筋に戻りましょう。
アケボノアワタケは夏から秋にかけて、
針葉樹、広葉樹を問わず、森の地面から発生します。
傘の直径は5〜10cmくらい。
最初はまんじゅう形でやがて平らに開きます。
表面は、薄紅色〜淡ワイン色、まさに、曙色です。
細かい毛が生えている場合もあります。
イグチの仲間なので、傘の裏側はヒダではなく、
スポンジ的な形状をしている管孔です。
白色から鮭肉色に変わり、古くなると褐色になります。
柄は高さ6〜9cmくらい。
表面は白地に紅色の鱗片が付着しています。
基部は鮮やかな黄色で、同定の重要なポイントです。
食。
あまり情報がないのですが、
そこそこおいしいという話もあります。
もちろん、と言うのも変ですが、
ぼくも食べたことはありません。
それにしても、きのことか粘菌とかコケとか、
地面や倒木の上で生きている小さな生き物が気になると、
森へ行ってもなかなか前に進めないんですよね。
生態を観察するのも面白いし、
生物を観賞するのも面白い。
森へ行くとあっという間に時間が過ぎてしまうのも、
まあ、無理はありません、はい。