きのこなど菌類は、分類的に言うと、
植物よりも動物に近い存在です。
当然、光合成をすることができないので、
生きていくためのエネルギーを外部から摂取します。
つまり、何かを「食べる」わけです。
きのこが栄養を得る方法は、
腐生、共生、寄生と、大きく3つあります。
腐生は、落葉、枯木、倒木など、
死んでいる生物体から栄養を吸収します。
共生は、生きている樹木の根ときのこが共に、
菌根という器官を形成して互いに栄養を交換します。
寄生は、生きている植物、動物、菌類などに取り付き、
栄養を吸収します。
ナガエノヤグラタケは、きのこから発生するきのこ。
つまり、きのこがきのこを「食べる」わけです。
食べる肉食動物と食べられる草食動物、
という関係に近いかもしれません。
肉食系きのこ・ナガエノヤグラタケと、
草食系きのこのシロハツ、という感じでしょうか?
きのこは、いろいろなものから発生します。
つまり、いろいろなものを食べているわけで、
お目当てのきのこを探す場合には、
そのきのこの「好物」をあたるわけです。
腐生菌のシイタケを探すなら死んだ木(広葉樹)。
共生菌のマツタケを探すなら共生関係にあるマツの周り。
と、いう感じに。
しかし、そうは言っても、
きのこを食べるナガエノヤグラタケを探すのは、
けっこう大変かもしれません。
そもそもナガエノヤグラタケが「好物」にしている、
シロハツやケシロハツの発生場所を見つけたとしても、
そのきのこから、確実に、ナガエノヤグラタケが、
発生するとは限りませんからねえ。
夏から秋にかけて、丹念に探すしかありません。
ナガエノヤグラタケは、
高さ1.5〜5cmくらいの、小さなきのこです。
傘は、直径0.5〜3cmほどで、
まんじゅう形から、やがて平らに開きます。
表面は白色〜灰色で、絹糸状の繊維があります。
傘裏のヒダは疏で、灰白色〜褐色。
柄は傘とほぼ同じく白色〜灰色です。
特徴的なのは、その胞子。
ちなみに、ヤグラタケは、
ヒダで普通の胞子をつくる一方、
傘の表面の組織が変化して胞子になるので、
時間が経つと傘いっぱいに茶褐色の胞子を乗せています。
ナガエノヤグラタケは、普通の胞子をつくらず、
ヤグラタケのように傘の組織が胞子に変化することもなく、
じゃあ、いったい、どうやって胞子をつくるかと言うと、
傘の裏側のヒダの組織が胞子に変わるんです。
胞子が成熟したあとに飛ばされるような構造がないので、
果たしてそれを胞子と言っていいものなのかどうか……。
飛べない胞子!
食不適。
毒は無いようですが、
腐ったきのこから発生しているわけで、
そんなきのこを食べようとは思いませんよね。
しかも、数は少ないし、小さいし。
きのこに乗っているきのこなので、
写真撮影的にはとても絵になると思います。
もし、見つけたら、じっくり観察してみてください。