森は、安らげるし、落ち着くし、気持ちがいいし、
楽しくて、とても素敵な場所だと思っている方が、
きっとたくさんいらっしゃると思います。
ぼくが、常々発信する、阿寒の森の話題も、
基本的には、楽しいと思えることばかりですが、
それは、森の本質ではありません。
森は、くまさんや、スズメバチなど、
人に危害を加える可能生がある生物が多数生息するし、
ウルシや、イラクサなど、
かぶれたり刺さったりする草だって生えているし、
アブや、ヤブカや、ヌカカなど、
生き血をすする昆虫が大挙押し寄せてきたりと、
人間にとって、不快で、危険な場所でもあります。
でもまあ、
どれほどたくさんマイナスポイントがあっても、
森へ通うのはやめられないんですよね。
それを補って余りあるほどの魅力があるわけで。
例えば、今回の写真の主役は、
もちろん、ブナノホソツクシタケなのですが、
その後ろに威風堂々を立っているブナの巨木の、
なんという存在感……。
青森県は、南八甲田のブナの森で、
いくつかの傾斜を乗り越えた先に、
でんと鎮座するこのブナの巨木を見つけたとき、
思わず声をあげちゃいました。
いったい、何百年、生きてきたのでしょう?
すごいなあ。
さて。
写真の面積の中で、あまりに小さな存在ですが(笑)、
主役の、ブナノホソツクシタケの話を。
この写真を撮影したのは、初夏、6月の初め。
落葉に埋もれた、ブナの実の殻斗(こくと)から、
とても小さなきのこが発生しているのを見つけました。
基本的に、夏に発生するきのこですが、
秋になっても腐らずに残っているようです。
ちなみに、殻斗とは、一般的に、
「ドングリの帽子」などとよばれる器官で、
ブナ科の樹木のどんぐり(種)を、
覆って保護する役割を果たしています。
きのこの高さは、3〜10mmほど。
黒くて細長く、上部がやや太くなり、
先端は黄色を帯びた白色で、尖っています。
上方の表層は、成熟する前には、
白く粉を吹いているような状態が多いようです。
ホウの実から発生する、ホソツクシタケとは、
近縁なので、姿かたちもそっくりです。
食不適。
根気よく探せばたくさん見つかりますが、
思いっきり小さいし、硬いし、
食べるには値しません。
ここのところ、東北地方の森には、
春〜初夏、そして秋に訪れておりますが、
阿寒湖周辺の森とはまったく違う生態系があり、
知れば知るほどますます興味が募ります。
原生林はいいなあ……。