ぼくは、代々木公園や、新宿御苑や、上野公園など、
東京のど真ん中にある緑豊かな公園が大好きで、
上京して時間があれば、足を運んで、
きのこや粘菌を探したり、樹木についたコケや地衣類を、
常にバッグに忍ばせているルーペで眺めたりします。
しかし、実は、とても物足りないんです。
そう、倒木がないから。
人工林、里山、公園、神社仏閣などでは、
樹木がたくさんあるとはいえ、人に管理されているので、
ほとんどの場合、倒木は邪魔者扱いされ、発見され次第、
速やかに片付けられちゃう運命です。
まあ、いろいろな事情があるから、
当然と言えば当然ですが……。
だからこそ、阿寒の天然林を訪れると、
わくわくしちゃうんですよね。
あっちにも、こっちにも、倒木が!
ぼくの森歩きの楽しみの半分以上は、
倒木を眺めることだと言っても過言ではありません。
倒れて1、2年の倒木は、まだ、粗ですな。
森の底に横たわって風雪にさらされ、
表面が苔むしてきたら「一人前」です。
少なくても、5、6年はかかるでしょうか。
じっくりと待つことになります。
マツだけに……。
キツツキにあちこちついばまれて樹皮を剥がされ、
幹が露出したりすると、なおグッド。
そう、そこから、菌やら細菌やらが入り込み、
倒木の中がより賑やかになるわけです。
昆虫、菌類、粘菌、細菌などが、
倒木の中でひとつの生態系をつくっている、
と考えるだけでも興味深いですよね。
さて。
今回の写真に写っているのは、
種がちょっとわからないのですが、
広葉樹の倒木です。
コケや地衣類がびっしり覆っている表面を触ると、
指がずぼって入るほど柔らかい場所も。
こういう倒木からは、きのこも次々に顔を出します。
そう、樹木の分解の主役はきのこですから。
お椀のような形をしているシロスズメノワンは、
夏から秋にかけて、腐朽の進んだ倒木などから発生。
傘の直径は1〜3cmほどの小さな小さなきのこです。
お椀の外側は、褐色〜暗褐色で、
周縁部を中心に短い毛がたくさん生えています。
お椀の内側は白〜汚白色で、
ややつるつるとした感じです。
食不適。
さもあらん。
見つけたら、ぜひ、じっくりと観賞してくださいな。
阿寒の森に通うようになって、
最初に「マイ倒木」と決めた木は、
数年くらいはたくさんのきのこや粘菌が発生したのに、
今や半分くらい土と同化してしまいました。
倒木を見ていると、命とか、時間とか、
いろいろなことを考えさせられます。
だから倒木観賞はやめられません。
倒木は、森の宝です。