この宇宙に存在しているものすべてが、
「エントロピー増大の法則」に支配されています。
そう、秩序あるものは乱雑になり、
形あるものはやがて壊れます。
本棚からあふれた本は足の踏み場を奪い、
紅顔の少年はやがてじじいになっちゃいます。
にゃんこやわんこと生活を共にしている人は、
どんどん成長していく姿を目の当たりにします。
子犬は人間よりもかなり急ぎ足で老犬に。
きのこの子実体なんか、もう。
人間が徒歩の速さならロケットくらいのスピードで、
発生して消滅するものがほとんどです。
しか〜し。
子犬はもちろん可愛いのですが、
老犬もすごく可愛いんですよね。
子犬には子犬の、老犬には老犬の魅力があります。
そして、もちろん、きのこにも、
幼菌、老菌、それぞれの魅力があるわけです。
「老化」を恐れることなかれ。
さて、今回ご紹介する、
ナカグロモリノカサの写真を改めてご覧あれ。
何やら、ちょっと赤っぽい感じがしますね。
実は、これ、雨に打たれたからなんです。
すぐ上にあるシダの葉っぱが濡れています。
通常の傘の色は、地が白〜灰色で、
その名前の通りに中心部が灰褐色〜黒褐色ですが、
ほんのり紅をたたえて立つ姿の色っぽいこと!
しかも、ところどころに大小の傷があり、
その痛々しさが、却って魅力を増幅しています。
包帯をしている綾波レイ的な……(笑)。
(わかるひとにはわかりますよね!)
ナカグロモリノカサは、夏から秋にかけて、
各種林地、草地、路傍などの地面から発生します。
傘の直径は、4〜10cmほど。
始め半球形で、徐々に平らに開きます。
ヒダは密で、胞子の成熟具合によって、
色が白〜肉色〜チョコレート色に変化します。
柄は高さ7〜12cmくらい。
色は白く、上部の幅が広いツバを持ち、
下部に向かってやや太くなっていきます。
有毒。
毒成分は不明なのですが、
誤食すると腹痛、下痢など、
胃腸系の中毒を起こします。
毒を持っていようが、倒れる寸前だろうが、
きのこが魅力的であることに変わりありません。
生きものは、すべて、美しい。
断言します。