きのこに興味を持つと、日常生活でも、
どんどんきのこが目に入るようになります。
いわゆる「きのこ目」です。
では、はたして、
「きのこ耳」はあるのか?
「きのこ鼻」はあるのか?
改めて考えてみると、
きのこって、音のイメージがありません。
きのこが発する音を人間の耳が捉えるのは、
いろいろと難しいのかもしれません。
ある種のミズゴケは、胞子を放出するとき、
胞子が入った袋が弾けるので、
ほんのかすかに破裂音が聞こえることもあるとか。
もしかしたら、きのこにも、
似たようなパターンがあったりして……。
きのこの音、聞いてみたいなあ。
一方、臭うきのこはたくさんあります。
ですから、ぼくも、他のきのこファンの方と同じく、
「きのこ鼻」も持っている、と自負します。
スッポンタケの仲間など、
異臭で昆虫を引き寄せて体に付着させ、
胞子を拡散させるタイプのきのこの、
まあ、臭うこと、臭うこと……。
香り高いことで有名なきのこと言えば、
マツタケやトリュフなどを思い浮かべますが、
それらを匂いだけで探せるかと言えば、
残念ながら、ぼくには不可能です、はい。
あるとき、阿寒の針葉樹林を歩いていて、
ニオイハリタケを見つけました。
このきのこは、けっこう匂います。
果物や芳香剤を思わせる、甘酸っぱい爽やかな香り!
ところが、この写真のきのこは、
まだ新しいのに、まったく匂いがしません。
試しに、一部をちょっとちぎって、
鼻に近づけてみても、やはり匂いなし。
そう、見つけたきのこは、ニオイハリタケではなく、
ニオイハリタケモドキだったんです。
ニオイハリタケモドキは、夏から秋にかけて、
針葉樹の森の地面から発生します。
傘の直径は3〜11cmくらいで、平ら〜浅い皿状。
表面は柔らかいビロード状から不規則な凹凸状に。
色は青みを帯びた白から帯褐色、黒褐色に。
ハリタケの名前の通り、
傘の裏面は5mm内外の細い針がびっしり。
柄は不正円柱状で高さ2〜5cmくらいです。
ニオイハリタケとそっくりですが、
香りのあるなしでほぼ完璧に区別できます。
ステキな香りがするニオイハリタケ同様、
こちらも、食不適。
匂いを嗅ぐ楽しみもないので、
ただひたすら、観賞にいそしみましょう。
この写真のように、たまに、
赤やオレンジ色の美しい液体を分泌します。
これがまたきれいなんですよね。
お菓子みたい。
五感できのこを楽しみましょう!
と、たまに言うことがあるのですが、
どうしても耳だけは、いまひとつ、
楽しめないわけで……。
今後の課題とします、はい。