阿寒を象徴する木のひとつ、アカエゾマツは、
他の樹木が成長するには困難な環境でも、
生きていける強さを持っています。
逆に言うと、他の樹木が栄えている場所では、
おそらく生存競争に負けてしまうんです。
たまにやってくる大嵐のあと、
森の至るところが数日〜数か月にわたって、
川や沼のようになってしまうことがあります。
若くて細い木々は、枯れてしまうものが多いけど、
アカエゾマツだけはいつもと変わらず、どっしり、
というシーンを少なからず見てきました。
雌阿寒岳を発する沢の源流部に広がる湿地では、
ミズバショウが群落をつくっている合間合間に、
立派なアカエゾマツがどっしりと立っています。
そもそも、その沢の水だって、
もとを辿れば酸性の強い温泉が流れ出したもの。
当然、魚の姿も見ることはありません。
やっぱり、アカエゾマツは、すげえ!
川の流れから少し離れると地面はやや乾燥して、
草やコケや地衣類に覆われているのですが、
ここがアンズタケの大生息地なんです。
アンズタケは、その名のとおり、
果物のアンズを思わせる爽やかな香りがして、
ヨーロッパなどでは食菌として珍重されています。
(フランス料理の「ジロール」です!)
アンズタケの傘は、鮮やかな黄色で、
周縁部が不規則に波打っています。
ヒダはしわしわで乱れに乱れ(笑)、
太く短い柄の下方まで伸びていることもしばしばです。
ところが、あるとき、
やけにオレンジ色が濃くて、
柄が細長くてヒョロヒョロした個体を発見。
長い間アンズタケだと思っていたのですが、
つい最近になって、たまたま図鑑を眺めていたとき、
別種だと気づいたわけで……。
それが、今回ご紹介する、
トキイロラッパタケです、はい。
アンズタケに、似ているような、似てないような。
トキイロラッパタケは夏から秋にかけて、
主に針葉樹の林地で発生する菌根菌です。
基本的には、淡い朱橙色〜バラ色ですが、
薄い黄色〜白っぽい個体もあるとか。
高さは1〜3cmくらいです。
食。
ややバターっぽい香りがするのですが、
乾燥させたものは特に香りが強く、
炒めものなどに合うそうです。
アンズタケの仲間は似たような別種もあるし、
そもそも食用で知られたアンズタケにも、
微量ながら毒成分が含まれているというし、
食べる場合にはくれぐれもご注意を。
アカエゾマツの森のいたるところに沢が流れ、
林床が湿地で、ミズバショウが生えていて、
きのこもたくさん発生する場所……。
阿寒の自然の多様性、すごいでしょ!