不正解、食べられます!
ヌメリスギタケモドキ食

きのこは、植物のように光合成ができないので、
外部から栄養を摂取しなければ生きていけません。
そういう意味でも、菌類であるきのこは、
植物よりも動物に近い存在だと言えます。

つまり、何かお目当てのきのこを探すには、
そのきのこの「主食」「好物」を探すのがいちばん。
腐朽菌(倒木、枯木、落枝、落葉などから栄養吸収)、
寄生菌(植物、動物、菌類などの生体から栄養吸収)、
菌根菌(樹木とお互いに栄養のやり取りをしている)、
と、きのこは大きく3つに分けることができるので、
探したいきのこが何を「食べている」か、
事前に調べておくことが重要ではないかと。

しかしながら、きのこは、自然の生きものなので、
図鑑には広葉樹から発生する、とあるのに、
実際には針葉樹から発生していたり、
サナギタケだから昆虫の蛹から発生すると思いきや、
蛹になる前のイモムシ・ケムシからも発生したりと、
ニンゲンがあれこれ想定することを軽く裏切ります(笑)。

さて。
今回ご紹介するきのこは、
その名も、ヌメリスギタケモドキ、です。
実にややこしい名前を持つ奴らなんですよね。
スギタケ、スギタケモドキ、ヌメリスギタケ、
そして、ヌメリスギタケモドキ。
なんだかなあ……(笑)。

実は、最初に、この写真のきのこを見つけたとき、
え!え!え! と思ったんです、はい。

ヌメリスギタケモドキは、
広葉樹から発生すると図鑑にあり、
阿寒でもそれまで広葉樹から発生したものしか、
見たことがなかったんです。

ところが、この写真のヌメリスギタケモドキは、
なんとなんと、針葉樹のトドマツから発生!
すわ、新種か! と思い、
早速、知り合いの研究者に尋ねたところ、
まあそんなこともあるだろう、とのこと(笑)。
ちゃん、ちゃん。

ヌメリスギタケモドキは、夏から秋にかけて、
広葉樹の枯木や生木の幹から発生します。
水辺のヤナギから生えることが多いので、
「ヤナギタケ」などと呼ばれることもあります。

傘は直径4〜15cmほど。
まんじゅう形から平らに開きます。
表面はややゼラチン質で、黄色のち黄錆色、
全面に三角形で褐色の鱗片が付着しています。

ヒダは密で、淡黄色のち褐色。

柄は中央から下にかけて鱗片があり、
高さは5〜15cmくらい。
粘性はありません。

食。
やや癖がありますが、
さっぱりしていて汁物に合います。
昆虫たちにも大人気で、
傘が開くと同時に、大小様々な虫が大集合。
採取する場合は虫との真剣勝負です(笑)。

ニンゲンの思惑通りにいかないのが自然だし、
その思惑通りにいかないところが自然の魅力なので、
各種自然が好きな人も、われわれきのこファンも、
日々、自然の意地悪にヤキモキしつつ、
思いっきり楽しませてもらっているわけです。

森歩きはやめられません。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。