我々の生きているこの世界というものは、
五感を通じてインプットした外界の情報を、
脳みそが処理して形にしているのだ、
と考えるならば、ぼくとあなたとでは、
持っているツールがまったく異なるわけですから、
仮に同じ世界を見ているとしても、
認識は異なっていてしかるべきです。
この大宇宙に浮かんでいる地球は、
おそらく、きっと、たったひとつなのでしょうが、
その表面にへばりついて生きている我々にすれば、
その命の数だけ地球が存在するのではないかと。
そう、目の前に生えているきのこを、
美しいと思う人と、気持ち悪いと思う人では、
同じ地球に住んでいるように見えても、
実は別々の世界に生きている……。
と、いうことで、
あなたは、今回の写真のきのこを、
美しいと思いましたか?
それとも……。
今回ご紹介するきのこ、カレエダタケは、
夏から秋にかけて、森の地面から発生します。
腐った樹木から養分を吸収する腐生菌ではなく、
森の木々と地中でつながって、
互いに栄養のやりとりをする菌根菌なのでしょう。
高さは3〜8cmほど。
各枝は短く不規則に樹枝状に分かれ、
上部は細かい枝が集まってトサカ状に。
全体的に白〜灰白色〜淡灰褐色で、
先っぽはさらにちょっと濃い色をしています。
肉は白く、しっかりと弾力を感じるのですが
強靭というほどではなく、力を加えると、ポキリ……。
温帯では普通に発生するきのこで、
毒がないことはわかっていますが、食不適。
つまり、おいしくない、ということ!
サンゴのような複雑な形をしているので、
観察、鑑賞するのにぴったりかと。
無理して食べる必要はありませんよね。
考えてみたら、カレエダタケを、
美しい、と思う人同士であっても、
持っているツールが異なるのだから、
やはり同じ地球の別の世界に住んでいる、
ということになるのかもしれません。
その別の世界に住んでいる(かもしれない)我々が、
互いにコミュニケーションをとることができるのは、
例えば、言語とか、科学とか、哲学とか、
同じ道具を持っているからに違いなく、
共通のルールをしっかりと構築し、他の生物を尊重し、
この地球でともに楽しく生きていきたいものです。
ちなみに、
今回の写真は、阿寒湖周辺ではなく、
群馬県西部で撮影しました。