ぼくは、初夏から晩秋まで、ほぼ毎日、
きのこや粘菌(変形菌)やコケなど、
いわゆる隠花植物の写真を撮影するために、
北海道の阿寒湖周辺に広がる森へ出かけています。
一般的な観光客が、
阿寒の森へ出かけた場合に何を見ているかというと、
樹木とか岩とかそこそこ大きなもの、
つまり、森を森として見ているのではないかと。
しかし「きのこ眼」で森を眺めると、
森の構成要素が、細分化し、微小化します。
一般の人はおそらく気づかないだろう、
樹皮を覆う地衣類の間に生えているきのこ、
岩の上に密生するコケの間に生えているきのこが、
探すともなく眼に入ってくるんです。
のぺっとして平板に見える森の風景も、
微視的に、そして、きのこ眼的に見ると、
複雑でわくわくするほど魅力的なのです。
コケは遠目には緑色の塊のように見えますが、
よくよく目を凝らせば、
何十本、何百本で構成されていることがわかりますし、
さらにルーペなどを使って拡大して見れば、
とても精緻で美しい構造であることに気づき、
そりゃあ感動すること間違いなしです。
ある年の初夏に、
白神山地の青森県側にある、
ブナの森の遊歩道を歩いていると、
倒木に生えたコケの間にきのこを発見。
アミスギタケです。
アミスギタケは夏から秋にかけて、
広葉樹の枯れた枝などから発生します。
傘は円形で中央が窪み、ときに漏斗状で、
黄褐色の地を褐色の少鱗片が覆っています。
直径は1〜8cmくらい、厚さは1〜4mmほど。
裏側は、白〜淡黄色で、名前にあるように、
角形の小さな孔が放射状に並んで網状に。
イグチの仲間のようなスポンジ状ではありません。
柄は傘と同色で円筒形、長さは2〜4cmほど。
食不適。
傘はまるで革のように強靭で、
手でちぎろうとしてもなかなか切れません。
食べたとしても、おそらく噛み切るのが大変でしょう。
実は、このアミスギタケの写真を撮影したあと、
そのすぐ脇に、小さな小さなきのこを発見。
これまたたくさんの写真を撮影したのですが、
視線がどんどん微細化していくと、
年齢的に、目の負担が増えて困ります、はい。