阿寒湖(阿寒湖温泉)は北海道有数の観光地。
特別天然記念物のマリモや、
豊富な湧出量を誇る穏やかな泉質の温泉は、
旅をする人にとっては大きな魅力ですが、
それらも、大自然あってのものです。
広大な森は、住民に、訪れる人に、
物質的なものだけではなく精神的なものも含めて、
いろいろなものを与えてくれます。
もちろん森の贈り物を享受しているのは、
人間だけではありません。
ヒグマやエゾシカを始めとした大型の哺乳類から、
小鳥に爬虫類に両生類に昆虫に微生物などなど、
この森なくして生きていけない生物は、
きっと星の数ほどいるでしょう。
もちろん、われらが菌類も、
森に依存して生きている、
と言っても過言ではありません。
人間的な視点から考えると、
きのこは、森をつくっている側、
生態学的な用語で言うところの「分解者」で、
生物遺骸や排出物を分解して無機物に還し、
植物が再利用できるようにする、
と言った「働き」のことが思い浮かびます。
しかし、きのこは、
植物よりはずっと動物に近い生きもので、
光合成ができないので生きていくための栄養を、
外部から摂取しなければなりません。
つまり、生きていくために何かを食べている。
森をつくるとか云々とか関係なしに、
自分の生のために何かを食べているわけで、
それが結果的に「分解」になっているだけ。
そう、きのこは、森で、
自由自在に生きているだけなんです。
「きのこのように自由だ」
というフレーズを思いついたので、
どこかでかっちょよく使えないかなあ、
などと考えながら歩いていたら、
古い倒木に小さなきのこを発見。
ムラサキゴムタケです。
ムラサキゴムタケは、夏から秋にかけて、
腐朽が進んで湿った腐朽木や落枝上に発生します。
子実体は、最初、粒状、球形で、
成長するにつれて、椀形、皿形に。
コマのような形になることもあるようです。
色は赤紫〜帯紫色で、直径は0.5〜2cmほど。
表面は始め平滑で、成長するとシワができたりします。
縁は、しばしば波状になります。
触ると寒天質で、やや弾力があります。
食毒不明。
おそらく毒はないと思われますが、
とても小さいし、食用には向きません。
見つけたら、見て、触って、愛でましょう!
阿寒の森や自然から、
いろいろなものを享受しているひとりとしては、
阿寒の森の魅力、自然の魅力を、
もっとたくさんの人に、知っていただき、
魅力=価値=大切にすべきもの、
という認識を共有できたらいいなあ、
と思っています。
実は、地元の住民が、その魅力を、
いちばん知らなかったりするのですが……。