きのこや粘菌に興味を持つと、
「きのこ眼」「粘菌眼」にどんどん磨きがかかり、
自然の森はもちろん、大都会の街中などでも、
きのこや粘菌が目に入るようになってきます。
たまに、街灯やオブジェなども、
きのこや粘菌として認識してしまうという、
デメリットも無くはありませんが……(笑)。
きのこや粘菌が好きになると、
きのこや粘菌が生きている場所が気になるんです。
すると、地面や、倒木の上では、想像以上に、
多様な生きものが生息していることに気づきます。
微小な昆虫やらコケやら地衣類やら土壌生物やらが、
だんだん目に入るようになって、気になりだすと、
普段あまり意識したことがない土壌や倒木、
あるいは、落葉などの植物遺骸、動物の排泄物まで、
とても魅力的なものに感じてしまうのです……。
シカのフンから発生した透明感あるカビや、
シャクナゲの葉をもちもちに奇形させる菌類を、
じっくりルーペで観察する面白さ、ときたら!
5月下旬頃、新緑真っ盛りの、
青森県は八甲田山麓のブナの森で、
しゃがみこんで、前年落ちた葉の間を、
見るともなく見ていると「きのこ眼」発動!
小さな小さなきのこ、その名も、
ブナノシロヒナノチャワンタケを見つけました。
春に、ブナの殻斗(かくと)
=どんぐりの袴・お椀・帽子、
あるいは、クリのいがにあたる部分=
から発生する、そりゃあ小さな小さなきのこです。
長さ数mmの柄の上に、直径1〜3mmの円盤状の傘。
柄も傘も、全体的に真っ白です。
子嚢菌なので傘の表側に胞子が入った袋=子嚢があり、
この写真ではちょっとわかりづらいのですが、
成熟すると黄色く色づきます。
ブナ(日本固有種)の殻斗のみから発生し、
欧米に類似種が見られないことから、
2001年に新種登録され、日本固有種とされています。
食毒不明。
まあ、食べようにも、あまりに小さすぎて、
味も香りものどごしもへったくれもありません。
見つける喜びを堪能しましょう!
ちなみに、
この写真の右側に見える緑色の物体は、
昆虫のオトシブミが、
卵を生むために、葉っぱを巻いてつくった、
揺籃(ようらん)と言われているもの。
孵化した幼虫は内部から揺籃を食べて成長します。
昆虫も、本当に、おもしろいなあ!