「きのこ」と言うと、おそらく、
一部のきのこファン以外の多くの人は、きっと、
食べものだと認識しているような気がします。
もちろん、超絶的においしいきのこが存在するので、
きのこは食べものだという認識に間違いはありませんが、
誤食したら命を落とす猛毒を持ったきのこもいます。
きのこを食べものだとみなしてしまうと、
可食で、しかもおいしいきのこが良いきのこで、
毒きのこはこの世に存在しなくてもいい悪者とみなされ、
罪もないきのこが憂き目に……。
食べて中毒をおこす人間がいるから、
毒きのこという存在が出てくるわけですが、
そう、人間が食べて中毒をおこさなければ、
きのこは単なるきのこであって、
毒きのことはみなされないわけで。
ぼくは、永遠のきのこ初心者を自認していますが、
きのこの何が興味深いかというと、まずは、やはり、
外観の多様さ、面白さではないかと思います。
傘と柄を持ついかにもきのこらしい形のきのこより、
いわゆるきのこっぽくない形のきのこの方が、
もしかしたら多いかもしれません。
では、今回ご紹介する、
ハチノスタケの魅力は何か?
ずばり、傘の裏側ですな。
ハチノスタケは、主に初夏に、
ヤマグワの生立木、あるいは、
トドマツのやや太い落枝上でよく見かけます。
傘は半円形〜腎臓形で、
長径が2〜4cm、厚さは2〜5mmほど。
表面は淡黄茶色〜橙黄色で濃色の細鱗片を持ちます。
肉は薄く革のような質感です。
そして、裏側はヒダではなく網状のやや大形の管孔で、
その名前の由来になっているように、
放射状に長い、ハチの巣のような形状です。
これぞ、自然の造形の妙、実に美しい配列。
ああ、たまりません。
柄は短く、傘の中心からずれて着いてます(側生)。
木材を白色腐朽を起こすきのこですが、
多年生ではなく、一年生です。
食不適。
まあ、固くて、食べる気にはなれません。
色も形もなんとなく地味な感じで、
あまり目立たないようなきのこでも、
近くでじっくり見てみると、
思いがけない発見があったります。
きのこ鑑賞道は楽しく、奥が深いのです。