ニセクロチャワンタケ、
という名前の意味を考えるに、
おそらく、というか、間違いなく、
クロチャワンタケ、というきのこが存在していて、
そのあとに、
そっくりのきのこが見つかった、
あるいは、
混同されていたが別種だとわかった、
がゆえに、
「本家」「元祖」と区別するために、
「ニセ」という言葉が使われたのではないかと。
「モドキ」という言葉も同じですな。
しかしまあ、前例があるとはいえ、
同じ菌類のきのこという生きものでありながら、
「本物に似ている」という意味の名前をつけるのは、
ちょっと可愛そうだと思いませんか?
ねえ……。
ニセクロチャワンタケは、
「ニセ」という名前がついておりますが、
本家、本舗、元祖のクロチャワンタケに比べて、
サイズがひと回り、いや、二回りも大きいんです。
大きさがすべてではありませんが、
本家、本舗、元祖を凌駕しています。
さて。
ニセクロチャワンタケは、春から初夏にかけて、
針葉樹の林地の倒木や落枝、落葉から発生します。
(本家クロチャワンタケは地面から発生)
きのこはお椀形で、直径1.2〜4.5cmほど。
(本家の直径は、0.3〜1.5cmくらい)
「お椀」の内側は黒褐色〜褐色、
外側は真っ黒でわずかに毛が生えています。
基本的には柄がありますが、ない場合もあります。
きのこを正確に同定するには、多くの場合、
胞子の形などを顕微鏡で観察する必要がありますが、
この写真の個体は直径が4〜5cmくらいあったので、
大きさから「ニセ」の方だろうと判断しました。
食毒不明。
食欲をそそるようなきのこではありません。
鑑賞して楽しみましょう。
生物に「本物」も「偽物」もありません。
たとえ、人間に害を及ぼすとわかっていても、
すべての生物を尊重したい、と思うのですが、
わたくし、まだまだ未熟ゆえに、
蚊に刺されたりするとすぐに殺意を覚え、
部屋の中を追いかけ回したりしてしまいます……。
日々是精進、でございます。