「アクニオイ」タケ、なんて名前がついていると、
すんごく臭いようなイメージを持つかもしれませんが、
「アク」は、漢字で書くと「悪」ではなく「灰汁」。
灰汁の匂いがするきのこ、という意味です。
(ところで、灰汁の匂いってわかります?)
嗅覚というのは、極めて個人的な感覚ですよね。
好きな匂い、嫌いな匂いは、人それぞれですが、
さらに、良い匂いと悪い匂いの境界があやふやというか、
なんか、紙一重であったりもします。
自分が大好きな食物や飲物であっても、
よくよくじっくりと匂いを嗅いでみると、
爽やかだったり、甘酸っぱかったり、というような、
誰もが認める「いい香り」の他に、けっこう、
嫌な匂いが混じっているような気がしませんか?
ワインのソムリエのコンテストなどでも、
香りを表現するのに、果物や植物の名前以外に、
「濡れた犬」とか「猫のおしっこ」とか、
価値を落としちゃうのでは? と心配したくなるような、
比喩表現が使われたりもします。
でもまあ、些細な匂いにも気づいて言語化できるって、
考えてみるとすごいことですよね。
さて。
アクニオイタケは、秋に、
主に針葉樹の倒木や切株から発生。
小さくて可愛らしいきのこです。
傘は円錐形〜釣鐘形で、灰褐色〜黄褐色で、
今回ご覧いただく写真のように湿っているときには、
周縁部にはっきりとした条線が見えます。
ヒダは隙間なくびっしりと詰まっていて、灰色。
縁は白っぽくなっています。
柄は平滑で、傘と同色。
すらっと伸びています。
先に、灰汁の匂いがする、
と書きましたが、実際に匂いを嗅いでみると、
なんとなく、病院臭いというか、
消毒液っぽいような匂いがします。
食不適。
小さいし、匂いが匂いだし、
眺めて楽しみましょう。
匂いが良いきのこと言えば、
日本人なら真っ先に名前を思い浮かべるのが、
秋の味覚・マツタケですが、
この香りは、北欧の人たちには不評なのだとか。
数日はき続けた靴下の匂いがする、とか、
何日も風呂に入ってない人の匂い、とか、もう。
匂いを感じるのは、個人差はもちろん、
地域差も少なくないのかもしれません。
アクニオイタケをいい香りだと思う人がいても、
全然不思議ではありません、はい。