北海道阿寒の森は、
自然が好きな人たちにとっては、
誘惑に満ち満ちています。
常に何かをせずにはいられないんです。
ふた抱えもあるような、
トドマツやアカエゾマツの大樹が、
数え切れないほどたくさん、ぐいぐいっと、
天に突き刺さるように伸びている様子に、
畏れとも感動とも言える感情を抱くのも束の間、
地面に咲き乱れる高山植物の花々が気になり、
微かな芳香を感じたらその源をたどり、
鳥の声がすれば鳥の姿を探し、
吸血昆虫が肌に触れたら殺意をいだき、と、
落ち着いているヒマがありません。
五感が次々に気になる何かをキャッチし、
その得た情報を脳がフル回転で処理して、
瞬間瞬間の最優先行動を決めていきます。
幸いなことに、きのこや粘菌は動かないので、
見つけたら、たっぷりと、観察、鑑賞したあと、
アタマを写真撮影モードに切り替えて、
そのきのこや粘菌を、美しく、可愛らしく、
撮ることに精力を費やします。
ベニテングタケやコウバイタケなど、
鮮やかな色できのこらしい形をしているきのこは、
「可愛いなあ」とか「美しいなあ」とか、
一般的な読者の皆さんにも、その魅力を、
共感していただけるかと存じます。
しかし、今回ご紹介する、
ニカワチャワンタケともなると、
共感力のハードルが一気に上がるのではないかと。
でも、まあ、こういう変な形のきのこでも、
可愛いと思う人が、一人でも増えたら、
シメシメ、なのであります。
ニカワチャワンタケは、夏から秋にかけて、
腐朽がやや進んだ広葉樹の倒木などから発生。
基本的には群生することが多いようです。
洋コマ形で、直径は最大4cmくらい。
てっぺんの部分は、ほとんど平ら、
あるいは、ややくぼんでいます。
色は白色〜薄紫色で、
触ってみるとぷるぷるしたゼラチン質。
縁はわずかに鋸歯状です。
外面は色がやや濃く、多少のつぶつぶが見られます。
柄はありません。
食毒不明。
これからの研究が待たれますが、
まあ、食べられないとしても、
何ら問題はないかと存じます、はい。
ニカワチャワンタケは、別名、
ゴムタケモドキとも言われているようです。
色はともかく、形はちょっとゴムタケに似ているかも。