阿寒の森に限らず、森、あるいは、自然の魅力は、
何と言ってもそのふところの大きさなのではないかと。
動物に興味がある人、植物に興味がある人、
菌類に興味がある人、昆虫に興味がある人……。
それぞれのエキスパートが束になって挑んでも、
次から次に新しい「何か」が見つかるんです。
そして、
自然が好きな人というのは、往々にして、
自分の好きなジャンルを中心にしつつも、
縦横無尽にどんどん興味の幅が広がり、
究極的には目に見えるものすべてが、
観察、あるいは、鑑賞の対象になってしまう、と。
そりゃあ、飽きることなんかありません。
逆に、時間が、足りなくて足りなくて。
雌阿寒岳の山麓に広がる、
アカエゾマツの森へと続く遊歩道の入口付近で、
今回ご紹介する写真を撮影しました。
大きなアカエゾマツの風倒木の根本部分です。
ぼくが阿寒と関わるようになったときには、
もうこの根株はあったのですが、
ここまでステキではありませんでした。
自然は芸術だ、なんて言うと、
反対語の組み合わせで究極の言葉遊びみたいですが、
人間が、庭園とか、盆栽とか、自然のものを使って、
小さな自然を表現しようとした場合の、
ヒントのようなものがここにあるような気がします。
この写真のメインテーマが、
きのこだと思う方は、ぼくの仲間です(笑)。
この、小さな、赤いきのこは、ヒメダイダイタケ。
夏から秋にかけて、隣地や草地から発生。
ときに群生することもあるようです。
傘の直径は0.5〜2.5cmほど。
最初の円錐形、やがて、中丘を持つ平らに開きます。
表面は、橙色〜橙黄色で、粘性はありません。
ヒダは間隔が広く、柄に沿ってやや垂れています。
柄は高さ1〜5cm、傘と同色で、中空。
円柱状、あるいは、やや平たくなります。
食不適。
まあ、これだけ小さいきのこですから、
ぜひ、観察、鑑賞して楽しませていただきましょう。
ちなみに、この写真にうつっている、
白緑色っぽい紐状に見えるものは、
菌類と植物の共生体である、地衣類のミヤマハナゴケ。
さわった感じもふわふわで、そりゃあ、たまりません。
てっぺんから伸びているのはトドマツの幼木で、
その後ろの6枚葉は、高山植物のゴゼンタチバナです。
この根株を見るだけでも、数時間は楽しめます、はい。