不正解、食べられません!
ヒトヨタケ毒

ヒトヨタケ、です。

まずは、その名前。
漢字で書くと「一夜茸」。
一夜限りのきのこ、つまり、
一夜限りでいなくなっちゃうきのこなんです。

それは、きのこのきのこたる本分、
きのこの最重要使命であるところの、
次世代へ生をつなぐ胞子の散布、
その方法が、ちょっと変わっているから。

傘を持っているきのこだと、
傘の裏側にあるヒダや管孔でつくられた胞子が、
傘が開くとともにさらさらとこぼれ落ち、
(実は担子器という器官から射出!されてる)
風に乗って遠くまで運ばれていく、というパターンが、
まあ、一般的です。

ところが、ヒトヨタケは、
成熟するにつれて傘が溶けて液状になり、
真っ黒い液体がポタポタ落ちるんです。
胞子もろとも。

つまり、新天地を求めて、
遠くへ遠くへ胞子を飛ばすという戦略とともに、
(幼菌時には、胞子を飛ばします)
この、同じ場所で、また発芽したい!
遠くへ行きたくない! という戦略も兼ねているんです。
なんたる、策士!

英語では、その形状から、
inky cap (インクの傘)などと、
呼ばれることもあるようです。

そうそう、 今回のクイズの答えは「毒」が正解ですが、
これに異論を唱える人がいるかもしれません。

ヒトヨタケは、通常、
ヒダが白やピンクの幼菌であれば、
食用になるんです!
風味に癖がないので、軽く茹でて、
三杯酢やお吸い物にするといいとか。

しか〜し。

お酒と一緒に食べようものなら、
たちまち、顔や胸などの紅潮、頭痛、めまい、
呼吸困難などの中毒症状が!
何でも、コプリンという含有物質が、
アルコールを分解する酵素の作用を阻害するため、
人を悪酔いさせちゃう、ということらしいです。

ね、酒飲みにとっては、毒きのこ!
わたくし、何を隠そう、食したことがありません。

さて。
ヒトヨタケは、夏から秋にかけて、
落葉の堆積地や草地から発生します。

傘は直径5〜7cmほど。
釣鐘形で、表面は灰色〜淡褐色。
中央に鱗片、周縁部に条線が見られます。

ヒダは密集していて、
白、あるいは、ピンク色から、後に黒に変化。

柄は高さ10〜15cmほど。
絹のような光沢を持ち、中空です。

ちなみに、分子系統学的な研究の結果、
かつては、ヒトヨタケ科ヒトヨタケ属だったのが、
現在では、ナヨタケ科ヒトヨタケ属に分類されてます。

う〜む、写真に写っている、
素晴らしい巨木の話をしようと思ってたのですが、
(広葉樹のオヒョウで、樹齢500〜600年くらい)
ヒトヨタケのことだけで終わってしまいました……。
ま、いいか……(笑)。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。