そもそも、自然の摂理は、
人間の思惑どおりになりません。
きのこも、粘菌も、
もう1日待ったら、もう少し成長して、
さらに魅力的になって写ってくれるはず、
などと、しばしば思うのですが、
期待通りになることは稀有です。
しおれちゃったり、虫に食べられていたり、
完全に消滅してしまっていたり……。
こうだからああなるだろう、という予測は、
人間がつくったものでは大概当たるのですが、
自然のものにはなかなか的中しません。
だから、人間は、
自然を支配しようとしたがるのかも。
人間の思惑通りにならないものは、
やはりちょっと脅威を感じるから……。
ザラエノヒトヨタケも、
なかなか人間の思惑通りにはならないきのこです。
ヒトヨタケ、の仲間、
つまり、たったひと夜の命のきのこ……。
森で見つけても、次の日までもたもたしていたら、
とけてしまってどろどろの液体と化しちゃうわけです。
(実際にはとけるまでに2〜3日くらいかかります)
さて……。
ザラエノヒトヨタケは、秋から冬にかけて、
森や草地の地面、あるいは落葉の上から発生します。
傘の直径は、5〜7cmほど。
円錐形から平らに開き、最後は反り返ります。
表面は白色のち灰色、中央部は粘土色で、
繊維状の綿毛に覆われていて、
まるで編み物のようで、とてもきれい。
周縁部には放射状の条線があります。
そして、時間が経つにつれ、液化します。
傘の裏側のヒダはぎっしり間隔が詰まっていて、
白色、のちに、黒色に変色します。
柄は高さ5〜9cmくらい。
同幅か、上に向かってわずかに細くなる感じ。
全体的に白く繊維状の綿毛のような菌糸に覆われます。
柄がざらざらしているから、ザラエ……(笑)。
食不適。
さもあらん。
見つけたら、食べようとなどせず、
その儚いまでに美しさを堪能しましょう。
この世に現れて、数日で消滅してしまうのですから。
考えてみたら、自然と対峙するとき、
なんらかの感情を抱くのも人間の特性ですな。
ザラエノヒトヨタケが、儚いって?
う〜む、まあ、そうか……。
でも、儚くていいですよね(笑)。