きのことの出会いは、一期一会なので、
のほほんとしている暇など、ありません。
ここぞとばかり、季節関係なしに、森へ、里山へ。
五月は、内地だと、春から新緑へと季節が移ろい、
百花繚乱に咲き乱れる花々を楽しんだそのあとに、
本格的なきのこシーズンへと突入しますが、
多くのきのこを北海道で見るのは、もう少し我慢。
謝意を抱き、六月くらいから、森通いが始まります。
とはいえ、きのこは、季節に限らず、
ほぼ1年中見ることができます。
そう、サルノコシカケの仲間などは、多年生なので、
真冬でも、大地が雪に覆われていても、
必ず見ることができるわけで。
とはいえ、とはいえ、
北海道東部に位置する阿寒湖周辺など北国では、
遅い春が来て、雪がとけて、大地が露出すると同時に、
たくさんの草花が競うように一気に花を咲かせ、
そうしてようやく、きのこの季節到来、
という状況なわけで、格別の喜びなんですよ、これが。
今回ご紹介するコウバイタケは、
ぼくが、大、大、大スキなきのこです。
もしかしたら、コウバイタケに会いたくて、
何十年も阿寒の森に通っている、と言っても、
過言ではありません、はい。
しかも、コウバイタケは、
6月から10月まで、ぼくが阿寒湖に滞在中の、
ほとんどの期間で見ることができるんです。
いつ訪れても、必ずコウバイタケに会える。
こんな場所、世界広しと言えども、
そうあるものではありません、はい。
しかも、生えている場所が、また、素晴らしい。
地面も石や岩の上も、見渡す限り、コケ、コケ、コケ。
最期のときはここで死にたいと思うほどの楽園です。
さて。
コウバイタケは、針葉樹林内の、
湿った落葉、落枝、腐朽木から発生します。
傘は、釣鐘形で、直径0.3〜1cmほど。
表面は濃いピンク色〜赤珊瑚色で、
周縁部は淡く白っぽい色をしています。
傘裏のヒダは、やや間隔が広めで、白色。
柄は高さ3〜4cmほどで、白く透き通り、中空。
とにかく、その姿は、美しく、可愛く、
筆舌に尽くしがたいほどです、もう(笑)。
食不適。
さもあらん。
このきのこを見て食べたい、と思うような人は、
冷静に己をもう一度見直すことをオススメします。
ところで。
「きのこの話。」は、今回で連載500回を迎えます!
2011年3月1日に、ほぼ日の仲間に加えていただき、
まさか、こんなに続くことになろうとは……。
感謝感激雨あられ、でございます。
読者の皆さま、そして、
糸井重里さんをはじめとする、ほぼ日の皆さまに、
心よりお礼を申し上げます。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。