今回のこの写真を見て、
きのこはどこに生えているんだろう?
と、時間をかけて探してしまった方が、
もしかしたらいるかもしれません。
名前を聞けばすぐにおわかりいただけるかと。
そう、まったくきのこらしくない、
ペンキを塗りたくったような、赤い物体が、きのこ!
アカウロコタケです。
きのこの解説をする前に、もう一度、
まじまじと、この倒木をご覧ください。
この木は、日本では、北海道だけで見られる、
北方系の針葉樹、トドマツです。
まだすっくと立っている背後の木々も、
多くがトドマツです。
樹皮をびっしり覆っている、
葉っぱのような薄い緑色は、植物ではなく、
菌類と植物(藻類など)の共生体である、
地衣類(ちいるい)です。
分類的には菌類、つまり、きのこの仲間です!
1本の倒木を、じっくりじっくり見ていると、
時間がいくらあっても足りません。
ルーペを使うと、更に新しい世界が拓けます。
読者の皆さま、もし、森で、倒木を見つけたら、
端から端までじっくり見てみてください。
損はさせません(たぶん……)。
さて。
アカウロコタケは、主に針葉樹から発生します。
ぺらぺらの薄っぺらい姿をしていますが、
多年生で年々成長していく、というわけでもなく、
次の春までには姿を消してしまいます。
真っ赤〜濃い海老茶色の表面は、
よく見るとところどころで凹凸があります。
背着性、と言って、
きのこの裏側で樹木にくっついているので、
たとえきのこはぺらぺらだとしても、
表面と背面では構造がまったく違います。
食不適。
とても食べる気にはなれませんよね。
緑の森の中にあって、この赤を見つけると、
ああ、いい色を見せてもらったなあ、と、
ちょっぴり得した気分になれます。
ちなみに、
左上に樹皮が剥がれたトドマツが写っていますが、
これは、キツツキが虫を食べるために突っついたあと。
この木は、すでに、虫や微生物などに侵されていて、
もうほとんど死んだ状態です。
つまり、倒木予備軍。
数年後には立派な倒木となることでしょう……。