いつもいつも言っていることですが、
きのこの本体は、菌糸です。
菌糸は地中や倒木の中で糸状に伸びている細胞で、
人の目に触れることは滅多にありません。
我々が通常きのこと呼んでいるものは、
胞子をつくって放出する生殖器官であり、
正式な名前は、子実体と言います。
我々がきのこだと認識していたものは、
実は、きのこのほんの一部でしかなく、
本体は目に見えないところに隠れています。
まるでこの世の本質を現しているようですな。
物事の本質をしっかり見抜くには、
確かな知識と想像力が欠かせません。
これまた、きのこ観察・鑑賞も同じです。
きのこをしっかり見ようと思ったら、
生物学的な知識は当然不可欠なうえ、
形状や胞子散歩方法を探りたいなら、
数学や物理学が必要でしょうし、
組成に興味があるなら化学的知識も……。
人間ときのことの、
文化的、芸術的な関わりも面白いので、
哲学、民俗学、文学的方面の知識も……。
広く深い知識があればあるほど、
きのこを多義的に楽しむことができるのかも。
つまるところ、
きのこの魅力を探ることも、
世の中の何かの本質を探ることも、
突き詰めれば突き詰めるほどまた謎が増える、
の繰り返しで、奥が深いことこの上ありません。
だけど、そこがまた面白くもあるわけで……。
さて。
ムラサキホウキタケは、秋に、
森林内の地上から発生します。
色はスミレ色〜淡い紫色で、
高さは、1.5〜8cmほど。
樹枝状によく枝分かれしているもの、
枝分かれが少ないもの、両方あるようです。
柄の経は0.2〜0.3cmほどで、
1〜4回ほど枝が分岐します。
食。
こんなへんてこりんな、
きのこらしからぬ形をしていますが、
味も香りも温和でなかなかおいしいとか。
しかしながら、
たくさん採れるきのこではありませんし、
かつ、肉がけっこうぼそぼそしているので、
料理するのが大変かもしれません。
そんな、ムラサキホウキタケを見て、
地面の下に伸びている菌糸=本体を想像してみます。
きのこはたくさんの細胞が集まった構造物なので、
構成する細胞のひとつひとつを意識するように……。
木々と栄養をやりとりする菌根菌なので、
菌糸は何かの木の根と菌根を通じてくっついている。
そして、菌根と菌糸が森の地下でネットワークを形成。
木々やきのこが、栄養だけではなく、
情報までやりとりしている、と。
どんどん想像が膨らんでいきます……(笑)。
読者の皆さまもぜひいろいろ想像してみてください。