ヒトクチタケは、大きさも、形も、
クリの実そっくりな可愛らしいきのこです。
きのこは植物と違って光合成ができないので、
生きるのに必要な栄養を外部から摂取します。
木材腐朽菌とか、寄生菌とか、共生菌とか、
きのこが発生する基物によって、
いろいろな分け方があったりしますが、
実際のところ、きのこだって、生きものなのだから、
自分が好む餌を食べているだけなんですよね。
ヒトクチタケは、グルメというか、頑固者というか、
餌は、枯れてから1〜2年のマツなどの針葉樹。
立ち枯れの木、倒木、どちらもOKです。
逆に、ヒトクチタケが生えていたら、
枯れてから1〜2年である、と言えます。
経は2〜4cm、暑さは1〜2.5cmほど。
表面は無毛、平滑、栗色で、光沢があります。
触ると、カチカチに硬いです。
実は、下半分は空洞で、
胞子をつくる管孔部分がすっぽりと、
厚く硬い膜に覆われているんです。
ヒトクチタケ、という名前は、
クリのような形で、ひと口で食べられそうだから、
という意味ではなく、
時期がくると、きのこの下半分に、
口のような穴がひとつだけあくんです。
それで、ヒトクチタケ。
干した魚のようなけっこうきつい匂いがするので、
鼻がいい人ならすぐにこのきのこの存在に気づきます。
また、その匂いに誘われるからか、
空いた穴から中をのぞいてみると、
けっこうな確率で、いろいろな虫が入っています。
樹木の内側で菌糸が伸びているわけですが、
やがて子実体=きのこを形成するときには、
マツクイムシなどが空けた穴を利用するので、
ヒトクチタケを採集してみると、
穴の大きさとほぼ同じくらいの太さの、
柄がついていることがあります。
食不適。
まあ、カチカチに硬いし、
さらにはちょっと不快な匂いもするし、
人間が食べるにはまったく値しないきのこです。
空いた穴の中にたくさんの昆虫がいる、
ということは、ヒトクチタケの胞子拡散戦略として、
昆虫も利用しているのでしょうね。