ぼくは、基本的に、きのこが好きで、
きのこを可愛く、美しく撮影したいと思っています。
しかし、同じくらい、森も好きなので、
森で生きているきのこの写真を撮影できたら、
これほど理想的なことはありません。
そういう意味で、北海道阿寒湖の周辺には、
北欧の森を彷彿させるような、いかにも森という、
あまり人間の手が入っていない素晴らしい森が広がり、
かつ、天然の森、天然に近い森なので、当然、
生木、倒木、枯木など、きのこの「好物」も多く、
つまり、たくさんのきのこが発生するわけです。
森ときのこを撮影したい人間にとっては、
ほぼ理想的な環境だと言っても過言ではありません。
しかし、阿寒湖周辺では、
12月から翌年の4月くらいまでは、
ほとんど雪に覆われており、
多年生のきのこを除けば発生数は激減してしまいます。
そんな「きのこ閑散期」には、
季節を追いかけるように北海道を飛び出し、
各地に点在するきのこ好きの友人知人に助言を求め、
関東や関西方面をうろちょろしたりするわけです。
さて。
今回ご紹介するサンコタケは、
共著や著書の監修でお世話になっている、
国立科学博物館 植物研究部 菌類・藻類研究グループの、
保坂健太郎博士との打ち合わせのついでに、
国立科学博物館筑波実験植物園で撮影しました。
またこれが、変わった形のきのこなんです。
サンコタケは、夏から秋にかけて、
林地や腐朽の進んだ倒木の上から発生します。
幼菌時は経1〜2cmほどの白いたまご形。
成長すると、たまごを突き破って、
「本体」が伸びてきます。
上部は、円柱状で、高さ5〜7cmほど。
通常3本、時に4〜6本でアーチ状になり、
頂部で、互いにくっつきます。
色は黄色〜橙黄色、あるいは赤紅色。
内側に暗褐色で悪臭がする粘液(グレバ)をつけます。
柄は上部よりも短く、白くて円柱状。
食不適。
小さいし、臭いし、
あまり食べたいと思えるきのこではありません。
ちなみに、名前の「サンコ」は、
3個に分かれて伸びる、という意味ではなく、
両端が三つまたに分かれてとがった爪のある、
仏具の三鈷(さんこ)のことです。