ぼくは道なき原生林ばかりを歩いているわけではなく、
登山道や遊歩道がある森でもきのこを探します。
ゆえに内地に比べて圧倒的に人が少ない阿寒の森でも、
ごくたまに、きのこ採りの人と遭遇します。
厄介なのは「なんとかきのこの会」系の観察会。
とにかく、大人数で森に入って、
目に入るきのこを片っ端からすべて採集し、
大きなブルーシートの上に集めて、
これはなんとかというきのこ、
これは食べられる、これは毒、という感じで、
詳しい人が解説なんぞをするわけです。
思うに、なぜ、きのこが生えている場所で、
きのこと環境を含めて説明しないのか?
何でもかんでも手当り次第にきのこを引っこ抜くのは、
きのこに対する冒涜であり、乱獲ではないかと。
(会の終了後には食用以外のきのこをその場に廃棄!)
結局、多くの人は、
きのこが食べられるかどうかしか興味がないので、
なんとかの会が主催するきのこ観察会の多くは、
観察会ではなく、食毒判定会なんですよね。
全国津々浦々にある、
「なんとかのきのこの会」の方々におかれましては、
ぜひ、そのあたりのことを考慮して、正しく、
きのこ知識ときのこ愛を広めていただきたい、
と、強く願わずにはいられません。
さて。
今回ご紹介するきのこは、ヒナアンズタケです。
夏から秋にかけて、各種森林の地面から発生します。
全体的に黄色で、
傘は、経0.5〜3cmくらい。
傘裏のヒダは柄に向かって、
脈状に連結せずに長く伸びています。
アンズタケに似ていますが、さらに小型です。
食毒不明。
可食としている図鑑もありますが、
同種のアンズタケにも微妙ながら、
毒成分が発見されていることなどを考慮すると、
やはり、食べないほうが無難かと。
あと、小さいので、
食べるほど集めるのがけっこう大変かも(笑)。
でも、きっと、それでも食べたい!
と言う人がいるんだろうなあ……。
それにしても。
我が読者の皆さまにおかれましては、ぜひ、
きのこを、食物としてだけではなく、
同じ時代に我々と共にこの地球で生きている、
ひとつの生物であることをお忘れなく。
きのこの魅力は食べることだけではありません、はい。