赤いきのこは、とても魅力的です。
森を歩いていて、赤いきのこを見つけると、
思わず「あっ」「おお」などと声をあげてしまい、
ぐぐぐっとテンションが上がります。
茶色や灰色のきのこを見つけても、
たとえばそれが珍しいきのこだとしても、
それほど心は踊らないのではないかと。
オレンジ色や黄色の派手系のきのこを見つけても、
もちろん嬉しいのですが、やはり、
赤いきのこを見つけたときに比べると、
興奮度はそれほど大きくありませんね。
人間の目は、赤、青、緑の光を感知することで、
いろいろな色の情報を知覚しているらしいですが、
他の色に比べて、赤の感知度が特に高いのだとか。
と、すれば、赤いきのこにぴぴぴとくるのは、
生態学的にも自然なことなのかもしれません。
SNSにきのこ写真をアップしたときも、
ベニテングタケや、タマゴタケや、ドクベニタケなど、
赤系のきのこに対する反応も大きいです。
つまり、ぼくだけではなく、
世間のみんなも赤いきのこが好きなんですね。
美しいですよね、かわいいですよね、赤いきのこ。
さて。
本日ご紹介する赤いきのこは、
その名も、ベニヤマタケ。
春から秋にかけて、林地や草地から発生します。
傘は鈍い円錐形で、経2〜5cmほど。
縁は内側に巻きますが、後に開いていきます。
表面は赤血色で、粘性がありません。
傘裏のヒダは橙黄色。
柄は傘と同色で、高さ3〜7cmくらい。
円柱状ですが、しばしば、扁平にもなります。
食。
地方によっては食用にされるとか。
『山溪カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ』には、
「オムレツに利用する。
生のまま解いた卵に入れ、包み込まないように、
きのこを外側に出して焼き上げると
美しい色合いが生きる」
と書かれてます。
ちなみに、赤が好き、と言っても、
イチゴの赤、夕日の赤、血の赤などなど、
世の中にはたくさんの赤が溢れているし、
さらには、ぼくと、読者のみなさんが、
まったく同じ赤いきのこを見たとしても、
まったく同じ赤い色だと認識している、
確証はありませんよね。
つまり、赤いきのこが好き、
と言ったところで、その赤がどんな赤なのか、
定義するのも共有するのも実は難しく、
きのこを愛することは極めて個人的な行為なのだと、
改めて認識させられるわけです、はい。