ぼくがきのこや粘菌の写真を撮影しているのは、
主に北海道東部に位置する阿寒湖周辺の森ですが、
東北地方の白神山地や八甲田山の周辺、
奥入瀬渓流なども大好きなフィールドで、
ほぼ毎年、春と初夏と秋に訪れています。
ぼくは、きのこや粘菌やコケといった、
いわゆる隠花植物を見るのも撮るのも好きですが、
それだけではなく、そもそも森が大好きで、
道東では見られないタイプの森を求めて、
東北地方に通い続けているわけで。
それが、落葉広葉樹林、そう、ブナの森です。
ブナの生育の北限は北海道南部の黒松内で、
ここにも素晴らしいブナの森があるのですが、
やはり、世界最大規模と言われている、
白神山地の森は別格です……。
ブナの森の何が素晴らしいって、
森のダムと言われるほどに貯水力があるので、
ところどころに沢や川の大小の流れがあり、
湿度が担保されているために隠花植物天国なんです。
ブナの森では昔からきのこ狩りも盛んで、
人々の生活に欠かせないものになっています。
そんなブナの森を代表するきのこのひとつが、
今回ご紹介する、ウスキブナノミタケ。
とても小さいながら、存在感抜群のきのこです。
ウスキブナノミタケは、秋に、
前年に落ちて土壌に埋まっている、
ブナの実から発生します。
傘は経0.5〜0.7cmほど。
半球形から釣鐘形〜まんじゅう形、
黄色〜薄黄色で、周縁部に放射状の条線があります。
ヒダは淡黄土色でやや間隔が広め。
柄は高さ5〜7cmほどで、黄色〜淡黄色。
食不適。
まあ、小さな小さなきのこですから、
もし食べられるとしても食べた気はしませんよね。
ぜひ、見て楽しみましょう!
秋に、ブナの森にしゃがみこんで、
じっくりと目を凝らして地面を探せば、
けっこうたくさん見つかるはずです。
北海道の常緑針葉樹の森に比べると、
格段に明るく感じるブナの森は、
新緑の頃も、紅葉の頃も、
独特な光に満ちていて、もう、たまりません。
ブナの森もいいなあ……。
ちなみに、今回の写真は、その名のとおり、
ブナの実から出ているところを見せるべく、
きのこの下の落葉をめくって撮影しました。