いわゆる、冬虫夏草です。
もしかしたら、冬虫夏草を知らない方も、
いらっしゃるかもしれません。
冬虫夏草とは、もともと、
中国の3000m以上の高山帯で観察される、
コウモリガ類を宿主として生じた棍棒形のきのこ、
シネンシストウチュウカソウに付けられた名前です。
それがいつの間にか、
昆虫から発生するきのこの総称として、
使われるようになったのだとか。
ぼくも昆虫(クモなども)から発生するきのこを、
基本的に冬虫夏草って呼んじゃっています。
冬虫夏草という言葉そのものは、読んで字の如く、
冬は虫の姿をしているけど夏になると草になる、
つまり、虫から草(きのこ)が発生する、
という意味ですな。
冬虫夏草は世界で約500種見つかっていて、
そのうち、日本では、約400種が見られるとか。
そう、日本は、世界でもまれに見る、
冬虫夏草大国なのです。
で、ひと口に冬虫夏草と言っても、
一種類の菌がいろいろな昆虫に寄生して、
結果、ハチタケとかアリタケとかになるのではなく、
ハチタケはハチだけにしか寄生できず、
アリタケはアリだけにしか寄生できません。
で、今回ご紹介するきのこは、エニワセミタケ。
エゾゼミやコエゾゼミに寄生する冬虫夏草で、
北海道以外では、東北地方や近畿地方で、
稀に発見された例があるようです。
「エニワ」というのは恵庭市のことで、1984年に、
北海道恵庭市の丘陵地帯で発見されたことからの命名。
地上に出ているのは4〜10cmくらい。
柄はやや歪んだ円柱形で、淡褐色〜黄褐色、
太さは2.5mm〜5.5mmほどで肉質は硬い繊維質。
胞子が入った袋が集まっている結実部は、
不規則な長楕円形〜円盤形が寄せ集まって、
上方や先端に形成され、淡橙黄色。
冬虫夏草に特徴的な粒粒がたくさん!
柄とは明瞭な境界があります。
地下部分はセミの幼虫の、頭部、口器、胸部から、
単体、あるいは数本がまっすぐ伸びています。
食毒不明。
まあ、虫から生えているきのこを、
食べたい! って思う人は少数はでしょうね。
冬虫夏草はもともと「薬草」だったわけですが、
エニワセミタケに薬効があるのかどうかも不明です!
今回は、特に、掘った写真もご覧に入れます。
これ、掘り出すのに、すんごく苦労したの!
じゃ〜ん!
日本で見つかっているってことは、
多様な自然環境があればこそ、ですが、
先駆的研究者、そして、現在の研究者、
さらには在野のアマチュア愛好家の方々の、
血と汗と涙の結晶かと。
素晴らしい!