キッコウアワタケ、という名前は、
もちろん、傘の表面のひび割れが、
亀の甲羅みたいに見える、
ということで名付けられたに違いありません。
しかしながら、
よく見てみればわかるのですが、
傘の表面は単にひび割れているだけで、
亀の甲羅を思わせるような、
きれいな六角形なんぞは影も形もありません。
しかしながら、しかしながら、
単なるひび割れにしか見えないものを、
日本古来からの長寿吉兆の縁起物、
亀甲に見立てて名前を付けるなんてことは、
凡百の人間には到底できません。
ヒビワレアワタケという名前よりも、
キッコウアワタケという名前に、
なんとなくロマンを感じるのは、
きっとぼくだけではないと思うわけで……。
うん、素晴らしい名前ですな。
それにしても、
この、傘の、ひび割れは、
写真的にはすごく映えると思っています。
つるん、とした傘ではなく、
複雑にひび割れていることで、
まったく同じ種であっても個性が際立つわけで。
そう、まったく同じ模様は他には存在しないんです。
ついつい、いつもより、
じっくり鑑賞してしまいます。
キッコウアワタケは、夏から秋にかけて、
ミズナラなど広葉樹の林地に発生します。
傘は経3〜10cmほどで、
まんじゅう形から平らに開きます。
表面はビロード状、オリーブ褐色〜帯赤褐色で、
ひび割れていることがほとんどです。
傘の裏側は小さな穴がたくさん集まっている管孔。
イグチの仲間としてはやや大きく、不揃いです。
帯緑黄色で、触ると、ちょっぴり青く変色します。
柄は長さ5〜7cmほど。
血赤色〜暗赤色で、中実です。
食。
傘がひび割れていない類似種のアワタケも食。
それほどおいしいわけではないようです……。
現在、アワタケの仲間は、
分類学的に再検討されているとかで、
より細かく種が分かれていく傾向があるようです。
分類とか同定に興味がある人は、
最新情報に注意してみてください。