湖のほとりのほんの一角に小さな街があって、
周囲を広大な森が取り囲んでいるという環境。
阿寒湖温泉の住人は、森の中に住んでいる、
と言っても過言ではないかもしれません。
見渡す限り、人工物が一切存在せず、
目に見えるのは、木、木、木、木……。
その昔、生活場所であった森から飛び出して、
街をつくりだしていった生物の子孫としては、
阿寒の森にちょっと入っただけで、
恐れ、もしくは、畏れを感じずにはいられませんが、
でも、そんな場所が大好きなんですよね。
そして、森で目につくのは、樹木ばかりではなく、
その人の興味の持ちようによって、
本当にいろいろなものがあることに気づくんです。
そう、人は、基本的に、
自分の好きなものしか見ていないし、気づかないので、
都会にいようが、森にいようが、
花が好きな人であれば、次々に花を見つけますし、
昆虫に興味があれば、あちこちで昆虫が目に入ります。
そして、我らきのこファンは、
都会でも、森でも、次々にきのこを発見します。
ときには、雪をかぶった樹木の切り株や、
街の電灯でさえも、きのこに見えたり……(笑)。
いわゆる「きのこ目」ですな。
はい、阿寒の森の、
枯れたイタヤカエデ(たぶん!)の表皮に、
黒いきのこ発見! その名も、クロコブタケ!
クロコブタケは、夏から秋にかけて、
ナラの仲間など広葉樹の枯木や枯枝から発生します。
シイタケのほだ木からもしばしば発生するので、
本来発生すべきシイタケに害をなすと、
栽培者の方々からは嫌われているきのこです。
きのこ(子座)は、黒色で極めて固く、
爪で突くとカチカチと音がするほど。
内部には粉状の胞子が詰まってます。
形状は半球形〜平らに広がるものなど変化に富み、
表面には小さなつぶつぶがたくさんあります。
経は1〜3cmくらいのものが多いようです。
食不適。
さもありなん。
これだけ硬いとまったく食べる気が起きず、
無理やり採集するにはトンカチとノミが必要かも。
ちなみに、クロコブタケと一緒に写っている、
緑色のコケのようなものは地衣(ちい)類です。
コケ植物のように見えますが、
菌類と植物の共生体なので、
分類的にはきのこと同じ菌類です。
ブナやトドマツの表皮の大部分は、
樹木の模様などではなく、地衣類なんです。
街路樹などでも普通に見ることができるので、
ぜひ注目してみてください。