趣味とか嗜好は、ある意味、
その人をその人たらしめている重要な要素であり、
何人たりともそれを否定することはできません。
まあ、法律に触れたり、公序良俗に反したり、
という場合はもちろん例外ですけど。
趣味で、仕事で、写真を撮っている人たちにも、
嗜好というか、専門というか、
好きだったり得意だったりする分野があります。
自然写真にジャンルを絞っても、
風景・山岳、天文、海洋(水中)、植物・花、
動物、鳥、爬虫類、両生類、昆虫、土壌生物、
そしてそして、我らが菌類などなど、
すぐに思い浮かぶものだけでも多種多様です。
例えば、昆虫や、きのこと言った分野は、
一般的にはあまりスポットが当たらないので、
それに熱中すればするほど、
家族の理解が得られなかったり、
人々からやや冷たい視線を投げかけられたりと、
けっこうツラい目にあったりします。
だからこそ、昆虫ファンときのこファンが、
イベントとかフィールドで互いが出会ったとき、
まるで同志と会ったかのような感覚を、
ひしひしと感じることも珍しくありません。
そして、昆虫ファンときのこファン、
両方の心を鷲掴みにしてやまないのが、
虫から発生するきのこ、いわゆる、冬虫夏草です。
ムラサキクビオレタケは、夏から秋にかけて、
ブナの森など、やや冷涼な広葉樹林内の、
朽木や根株や倒木などから発生。
ややレアな存在で、北海道から鳥取県に分布します。
宿主となっているのは、コメツキムシ類の幼虫。
長さ0.5〜2.5cmほどのきのこが、
1〜3本くらい伸びてきます。
柄は円柱状で、淡灰紫色〜淡紫色。
締まった肉質で、太さは0.5〜1.5mmほど。
朽木内で分岐することもあります。
柄の先っぽがやや折れ曲がるのが名前の由来。
薄紫色に濃紫色の斑点がある円盤状の結実部が、
丁度その部分に、ちょこんと乗って、
(柄が結実部を貫通している場合もあるとか)
いかにも冬虫夏草の頭部、という姿になっています。
食毒不明。
昆虫食に慣れた方であれば、もしかしたら、
食べてもいいかも、と思うかもしれませんが、
一般的には口にするにはなかなか勇気が必要かと……。
まあ、とにかく、冬虫夏草を見つけたら、
生命の神秘を考えつつ、じっくり観察したいものです。
ちなみに、
鳥好きな人は「鳥屋」、虫好きな人は「虫屋」、
きのこ好きな人は「きのこ屋」などと、
呼ばれることがあったりしますが、
虫から発生するきのこ・冬虫夏草が好きな人は、
「虫草屋」などと呼ばれたりしています。