ぼくは、東北地方の春が好きで、例年、
ゴールデンウイーク前後から5月の終わりくらいまで、
岩手、秋田、青森あたりでぶらぶらしています。
あちこちの街で、サクラが満開。
山間部では雪が溶けて大地が姿を現し、
そこに生命のエネルギーをこれでもか!
と、つぎ込んだように、
あちこちで様々な植物が芽吹き、
すかさず、可憐で美しい花を咲かせます。
ぼくが毎年通っているブナの森では、
ピンクの花を咲かせたカタクリの群落が、
あちこちで見られるのですが、
キクザキイチゲ(白、青)や、ニリンソウ(白)など、
キンポウゲ科イチリンソウ属の花々も咲き誇ります。
いわゆる、スプリング・エフェメラル(春の妖精)、
などと呼ばれる花々ですな。
早春だと、お花は楽しめるけど、
きのこを探すには時期が早いと思われがちですが、
われらがきのこたちは、種類はそう多くないものの、
もちろん、早春でもしっかり姿を見せてくれます。
イチリンソウ属の学名は、
「Anemone(アネモネ)」と言いますが、
今回ご紹介するアネモネタマチャワンタケは、
早春に花を咲かせるイチリンソウ属の草花の、
真下の地面から発生します。
はじめは小球形、のちに、皿状〜椀状に開きます。
茶褐色〜暗褐色で、経は1〜3cmほど。
「お皿」の縁は上方に巻き、表面は平滑です。
柄は経2mmほどで、上部と同色。
地上に見えている部分は3〜5cmくらいですが、
地下の長さは10cmにもなり、菌核に繋がります。
通常の菌核菌の仲間は、
落ちた実や花などで菌核をつくりますが、
アネモネタマチャワンタケは、
植物の生きた根で菌核を形成するため、
宿主の植物を殺してしまうのだとか。
イチリンソウ属を自分で育てている方は、
アネモネタマチャワンタケの存在には、
くれぐれもご注意を。
食不適。
まあ、小さいきのこなので、
食べる気にはなれません。
北国に遅い春がやって来て、
美しい花々が今を盛りに咲き乱れているのに、
われわれきのこファンは、
その花には目を向けず、ひたすら、
地面に目を凝らすわけです……。
ちなみに、
今回ご覧いただいた写真に写っている青紫の花は、
キクザキイチゲです。
可愛らしいですよね。