「隠花植物」という言葉は、
今や、生物学的にはほとんど死語であり、
たまに目にすることがあるとしたら、
科学的ではなく文学的な文脈がほとんどです。
いろいろなところで何回も言っておりますが、
ぼくは、かつて、隠花植物として分類されていた、
きのこ、粘菌(変形菌)、コケ、シダ、地衣類こそが、
鑑賞&観察&撮影の最たる対象なので、
隠花植物という言葉をとても気に入っています。
思うに、この世の中において、
隠花植物という言葉がいちばん似合う人は、
明治時代の知の巨人・南方熊楠ですね。
え?南方熊楠を知らないって?
あの名作『読まずに死ねるか!』の作者、
コメディアンにして書評家の内藤陳なら
「死んでほしいと思う」と言うところでしょうが、
ぼくは、そんな過激なことは言いません(笑)。
「ggrks!」
え?この意味もわからないって?
う〜む、大変失礼いたしました……。
さてさて。
今回ご紹介するミズゴケノハナは、
花、という名前ですが、もちろん、きのこです。
その名前のとおり、ミズゴケの間から発生する、
そりゃあかわいいきのこです。
(イネ科の草の間、草地などからも発生)
ミズゴケもルーペなどでよく見ると、
精緻な造形で透明感があってとても美しく、
じっくりと観察&撮影なんぞしようものなら、
2時間、3時間なんて、すぐに経ってしまいます。
しかも、ミズゴケは、胞子が入った袋、
胞子嚢が弾けるときに「プチっ」て音がするんです。
森の中でも本当に聞こえるんですよ、これが。
感動です……。
あ、ミズゴケではなく、
ミズゴケノハナの話をせねば……(笑)。
発生時期は、夏から秋にかけて。
傘の経1〜2cmほどの、小さなきのこです。
平たいまんじゅう形でしばしば中央部がくぼみます。
表面は鮮赤色〜赤朱色。
微細なささくれに覆われています。
傘裏のヒダは白〜クリーム色〜帯赤黄色。
間隔がけっこう広くなっています。
柄は高さ2〜5cmくらい。
傘と同じく鮮やかな赤色です。
食不適。
小さいし、数もそれほど採れないし、
見て、撮影して、楽しませてもらいましょう!
それにしても、
赤いきのこと緑のコケの組み合わせ。
素晴らしい、としか言いようがありません。
自然はすごいなあ……。